仮面夫婦とは?離婚しないことでのメリット・デメリット
現在社会において、「夫婦」の形は多様化しています。
3組に1組が離婚しているのが現実ですから、「離婚はしないけれど婚姻関係は継続させている」という離婚一歩手前の夫婦も決して少なくありません。
しかし、愛が冷めながらも「夫婦」としての体裁を保つとなると、どうしても不自然が生じてきます。そんな不自然さのひとつの形が、「仮面夫婦」。
では仮面夫婦とはどのようなものでしょうか。仮面夫婦の特徴と共に、その実態に迫ります。
そもそも「仮面夫婦」って何?
「仮面夫婦」とは、その名の通り仮面を被った夫婦のことです。では、何の仮面なのか?それは、「笑顔」の仮面。
「あの奥さん、いつもニコニコして幸せそうだな」と感じる方が、ご近所にいませんか? もしかしたらそれは、「仮面」かもしれません。本心ではパートナーへの愛情は無くなっているとしても、笑顔で過ごすことで、円満家庭を演出しているのです。
よく「家庭内別居」と混同されがちですが、「仮面夫婦」とは似て非なるもの。どちらも「愛はないが一つ屋根の下で生活している」ことに変わりはないのですが、家庭内別居はそもそも生活動線を別にしているので、パートナーに笑顔を向ける必要がありません。それに対して仮面夫婦は、生活動線は同じで笑顔の仮面をつけているので、一見して普通の家庭と同じです。場合によっては、「あのご家族、いつもとても幸せそうね」と、普通の家庭よりも良く映るかもしれません。
夫婦の2割は仮面夫婦と言われることも
民間のアンケート調査では、夫婦の2割は仮面夫婦であることを自覚しているという結果が出ています。
例えば、2021年10月に婚活メディアのe-venzが実施した調査では、「自分の家庭は仮面夫婦だと思いますか?」との問いに、30代では約20%、40代では約23%が「はい」と回答。2024年2月に小学館Domaniが30〜45歳の既婚女性を対象に実施したアンケートでも、やはり約20%が「自分の家庭は仮面夫婦だと思う」と答えています。
以下、参考2記事
仮面夫婦の割合ってどれくらい!?既婚者男女200名に徹底調査 | ノマドマーケティング株式会社
既婚女性100名のうち「自分たちは仮面夫婦」と答えた人は2割!その理由と原因は? | Domani
2割と聞くと仮面夫婦の割合は意外に多いと思われるかもしれません。しかし、夫婦の3組に1組が離婚する世の中。夫婦の5組に1組が良妻・良夫に扮して世を忍ぶ仮面夫婦でも不思議はないでしょう。
仮面夫婦の具体的な7つの特徴
では「仮面夫婦」は、一般的な夫婦と具体的にどこが異なっているのでしょうか。
相手に関心がない
仮面夫婦は、パートナーに対する関心がありません。「今日仕事の後に飲みに行ってくる」と夫が伝えても、「はーい」で終了。
もし、パートナーに少しでも興味があるなら、「どの店に飲みに行くの?」「誰と行くの?」「帰宅は何時くらいになるの?」「その飲み会には女の子も参加するの?」など、質問事項は尽きないはず。しかし興味がないと、質問さえも特にありません。
関心がなくても、愛がなくても、それを隠して笑顔。これが、仮面夫婦の特徴です。
会話が事務連絡のみ
楽しいこと、悲しいこと・・・。夫婦が顔を合わせた際には、「ねぇねぇ聞いて!今日こんなことがあったのよ」なんてつい雑談を持ち掛けたくなるものです。
しかし、仮面夫婦には、そもそも楽しく談笑をしたいという気持ち自体がありません。「〇月〇日、△時から自治体の集金に来るって」「〇日に授業参観があるから用意しておいて」など、話しかけるのは事務的な用事があるときだけ。
「離婚はしないけれど私はあなたと楽しく会話したいとは思っていません」という意思表示をするかのように、仮面夫婦は事務連絡くらいしかコミュニケーションを取りません。
スキンシップやセックスがない
仮面夫婦は、互いに関心や愛情がないため、スキンシップなどもってのほか。円満な夫婦に見られる手をつなぐ、頭を撫でる、さりげなくボディタッチといった行為がありません。良い夫婦を演じなければならない人前ならまだしも、家庭では肌が軽く触れるだけでも嫌悪を覚えるというケースも。
そんな仮面夫婦に夜の営みはもちろんなく、多くの場合、セックスレスが常態化します。加齢による性欲減退や疲れなどの肉体的な問題がないのにセックスレスになることも仮面夫婦の特徴です。
休日はお互い別々に過ごす
互いの生活に干渉せず、それぞれでプライベートな時間を過ごすことも愛情のない仮面夫婦の特徴。子供のために夫婦で過ごすことはあれど、子供抜きでデートに行ったり、家で一緒にくつろいだりすることはまずありません。
例えば、たまの休日に夫は家で寝ていて、妻は友達と出かけているといった具合。夫婦で朝型・夜型のリズムが違えば、家庭でほとんど顔を合わせないこともあるでしょう。また顔を合わせたくないため、あえて休日の過ごし方や生活リズムをずらすケースも考えられます。
ほかに愛人や浮気相手がいる
愛情の冷めた仮面夫婦では、ほかに交際相手をつくることもしばしば。家庭ではセックスはおろか、スキンシップもないわけなので、ある意味自然なことといえるかもしれません。
一方に愛人がいるケースもあれば、お互いに浮気し合っている場合も。相手に関心がないため、わかっていて不倫を黙認することも仮面夫婦ではよく見られます。家庭外で自由に恋愛していいと決めている仮面夫婦もあるようです。
生活費の支払いや家事に滞りがない
生活費を納めたり、掃除や洗濯をこなしたりと、愛情はないものの家庭としての機能は保っていることも仮面夫婦の特徴。「子供のため」「生活や世間体のため」などと理由をつければ、嘘でも夫婦でいることのメリットはある状態です。
裏を返せば、生活費や家事の分担に滞りがないから、離婚せずに仮面夫婦を続けられるのでしょう。一方が生活費を渋る、家事をおろそかにし始めるといったことがあると、一気に関係が悪化し、離婚へと進むケースも考えられます。
対外的には良い夫婦である
知人や親戚の前など、対外的には良妻・良夫を演じてあたかも家庭円満であるかのように装うことも仮面夫婦の特徴です。例えば、普段は別々に過ごしても子供の授業参観には夫婦そろって参加したり、人前ではスキンシップをはばからなかったりします。
しかし、家庭に戻って人目がなくなれば、また互いに干渉しない冷めた夫婦生活へと戻っていきます。肌の触れ合いはなく、会話も事務的なこと以外はありません。このように家庭での内情と外面が全く異なることが、「仮面」夫婦と呼ばれるゆえんです。
仮面夫婦になるきっかけとは?
どんな夫婦も、結婚した当初は、まさか自分たちが後に仮面夫婦になるなんて考えてもいなかったでしょう。
仮面夫婦になるには、何かきっかけがあったはず。では具体的な、どのようなことがきっかけだったのでしょうか。
相手に愛情がない
最も多いパターンは、単純に「愛情がなくなったから」ではないでしょうか。もし、パートナーに対して愛情があれば、自然と仲睦まじく寄り添えるはずですから。
これが独身男女の恋愛であれば、「もう好きじゃなくなったから別れよう」と切り出せるところですが、婚姻関係にある以上は関係を簡単に解消できません。
そのため、愛はなくなっても、体裁として「家族」の形を繕い続けるのです。
生活スタイルが違う
また、生活スタイルの違いも、いつのまにか仮面夫婦へのきっかけになることがあります。
例えば、あなたは日勤、パートナーは夜勤。顔を合わせる頻度が少ないにも関わらず、お互いにその穴を埋めようとしないと、「あの人にとって私はどうでもいい存在なのね」と割り切った気持ちで生活するようになります。
生活スタイルは、仕事の関係で、どうにも自分では都合が付けられないときもあります。それは仕方のないことですが、その「埋め合わせ」をしない夫婦が、仮面夫婦へと移行するのかもしれません。
価値観が違う
人間誰しも、自分なりの価値観を持っています。
自分が「好き」と感じたものに対して、相手も「好き」と感じる。自分が嫌いなことは、相手も同じように嫌がる・・・。このように、二者が同じモノに対して同じように反応できれば良いのですが、現実問題そうはいきません。
「私は綺麗な部屋じゃないと落ち着かないのに!なんで服を床に脱ぎ散らかすの?」なんて相手の行動に苛立ちを感じたり、「私はドキュメント番組が観たいのにバラエティーばかり!」と、食事のときのチャンネルを不満に思うこともあるでしょう。
他人から見れば些細なことでも、当事者たちにとっては「チリも積もれば・・・」です。そして、積もったチリの分だけ愛情も冷えていく、といっても過言ではないでしょう。
友人にしても恋人にしても、それぞれ価値観が違うからこそ、それが個性となり付き合いに面白さが生まれます。しかし「人間」と「人間」が、ひとつ屋根の下でまったく同じベクトルを向いて過ごすのは、なかなか難しいのかもしれません。
相手の浮気
パートナーの浮気がきっかけになることもあります。「浮気をするなんて信じられない!離婚よ!」と思っていても、子どもが「パパだいすき♪」なんて無邪気な笑顔を向けていたら、無下に引き離すわけにもいかなくなります。
また、ご近所の奥様方から「あの奥さん、旦那さんの浮気が原因で離婚したらしいわよ」など好奇の目を向けられたくないために、「いつもと変わらない平穏な家族」を装うこともあります。
原因がなんであれ、感情ひとつでスパッと別れられないのは、独身時代と違う厄介なところといえるでしょう。
結婚後の相手の変化
「こんなに素敵な人は世界中のどこを探してもいない」と、相手に魅力を感じて結婚に至ることがほとんどです。しかし、その魅力は、永遠に続くものであるかというと、決してそうではありません。
「結婚前の夫はスリムで引き締まっていたのに、今はビール腹が目立って嫌だわ」「転職してからというもの、『仕事行きたくない』とか上司の愚痴ばかりでウンザリする」「休日には必ずデートに連れていってくれたのに、今では昼過ぎまでダラダラ寝て部屋から出てこない」・・・など、結婚後にパートナーが変化することで気持ちも変化することは珍しくありません。
けれどそのほとんどは、離婚理由として決定的なものではないため、「私が我慢すればいい話か・・・」と、ため息をつきながらも笑顔の仮面をつけて過ごすようになるのです。
セックスレス
離婚事由の一つとして「セックスレス」が通用するほど、夫婦の営みは結婚生活になくてはならないもの。しかし、現在の日本では、セックスレス夫婦が増加しているといわれています。夫婦といえど所詮は男と女ですから、様々な感情でレスになってしまうのは、ある意味で仕方がないことです。
「仕事で疲れていてそんな気にならない」「出産したら夫のことを男性として見られなくなった」など、セックスレスになる背景も様々でしょう。
「パートナーに指1本触れられるのも嫌」と感じるようになったら、それは仮面夫婦の始まりです。どちらかが拒めば、求めたほうは不満を抱きます。それが重なれば、心の距離が離れていくのも無理はありません。
仮面夫婦は離婚したほうがいいか
仮面夫婦にとって常に問題となるのが「離婚すべきか、離婚すべきでないか」。子供のため、生活のためと割り切った関係でも、相手に愛情のない夫婦生活を続けるのはストレスが溜まるものです。
以下では、あくまで一般論ですが、離婚すべき仮面夫婦とそうでない仮面夫婦の特徴をそれぞれ紹介するので参考にしてください。
仮面夫婦が離婚すべきケース
- 心身の健康に悪影響が出ている場合
- 子供にとって良くないと感じる場合
- 相手が不倫相手にぞっこんの場合
まず、仮面夫婦を続けることのストレスが大きく、抑うつや動悸といった症状が見られる場合、離婚すべきサインでしょう。無理して仮面夫婦を演じ続けると、うつ病やパニック障害などになってしまう恐れもあります。
また子供にとって良くない家庭環境だと感じる場合も一般的には離婚すべきです。とりわけ「子供の前で夫婦喧嘩が絶えない」「相手から子供へのハラスメントがある」「子供が離婚を希望している」といった場合には、離婚を検討してみましょう。
加えて、相手の気持ちが不倫相手にあり、離婚しても構わないと思っている場合も、仮面夫婦が離婚を考えるべきケース。次第に生活費が不倫相手のほうに流れていったり、不倫相手が離婚を迫ってトラブルに発展したりといったリスクがあるからです。相手の不倫について定かでない場合は、一度探偵事務所を使って本格的に調べてみるのもよいでしょう。
仮面夫婦が離婚すべきでないケース
- 会話のつまらなさがきっかけの場合
- 喧嘩から仮面夫婦のようになった場合
- セックスレスの場合
つまらない会話、大きな夫婦喧嘩、セックスレスなどがきっかけで仮面夫婦になった場合、離婚するのは時期尚早かもしれません。問題を解決すれば、夫婦関係を修復、再構築できる可能性があります。
例えば、夫婦の会話の仕方ですが、「相手に直してほしいこと」を話すことで脳がよく共鳴し、心の結びつきが強まるとの実験結果があります。お互いの不満を言い合う機会を設ければ、夫婦の絆が深まり、会話が楽しくなったり、仲直りできたりするかもしれません。
セックスレスに関しては、専門家のカウンセリングを受け、アドバイスをもらうことが有効だといわれています。離婚を即断する前に、まずはこれらの方法で夫婦関係の修復を試みるのもよいでしょう。
仮面夫婦が離婚をしないことでのメリット
他人からすると、仮面夫婦に対して「無理して結婚生活を続けるくらいなら早く離婚すればいいのに」と感じることもあるでしょう。しかし、仮面をかぶってでも結婚生活を続けているのには、理由があります。
生活を助け合える
仮面夫婦といえど、住んでいる家は同じ。そのため、生活を助け合えるというメリットがあります。
一人暮らしとなると、仕事だけではなく、家の掃除や、食材の買いもの、夕飯の準備、雑用などをすべて一人で請け負わなければなりません。しかし共同生活をしていれば、パートナーの働きが期待できるため、生活面はもちろん経済面でも大きく負担は減ります。
夫からしてみれば、帰宅したら夕食が用意されていて部屋も片付いているというのは、とてもありがたいこと。また妻の立場でも、夫の収入は家計の大きな支えになるはずです。
また子どもがいる場合、幼ければ幼いほど、一人きりの育児は肉体的にも精神的にも辛いもの。異性としての愛はなくなっても、パパ(ママ)として育児を手伝ってほしい、という側面もあります。
世間体が良い
また、夫婦が両方揃っていることで、世間体が良いという側面もあります。離婚をすると、ご近所から「あのご夫婦、離婚したそうよ」なんて噂が立つのは、どうしても避けられないことでしょう。また子どもの受験では、父母が両方揃っていないと不利になることもあります。
世間体を気にする家庭ほど、仮面をかぶってでも「家族」の形を保とうとするのかもしれません。
金銭面で優遇措置がある
配偶者がいると、金銭面で様々な優遇措置を受けられます。
例えば、年末調整での配偶者控除をはじめ、映画館での夫婦割、扶養に入りながら働けるなど、独身者にはない金銭的メリットが多くあります。婚姻関係を解消すると、一切なくなってしまいます。
「お金さえあれば今すぐにでも離婚したいのに・・・」と思いながら実行できない夫婦が多いのは、このような高待遇を手離したくないから、という背景があるのかもしれません。
調停や訴訟で消耗しない
愛情のない仮面夫婦が離婚するとなると、双方気持ちよく円満離婚とはいかない場合もしばしば。財産分与や慰謝料などで折り合いがつかず離婚調停となったり、泥沼の離婚訴訟に発展することも。
子供のいる家庭では、親権者や養育費の問題で揉めるケースもよくあります。また、そもそも関心も愛情もない相手に「離婚しない?」と切り出すだけでも面倒という人が多いでしょう。
離婚にまつわるそうしたゴタゴタで消耗するくらいなら、仮面夫婦を続けるほうが負担は少ないかもしれません。決して満足ではないけれど「現状維持が一番楽」。これも仮面夫婦が離婚しないことのメリットです。
子供に動揺を与えない
親の離婚は、子供に少なからず動揺を与えます。とくに片方の親に強い愛着を持つ「ママっ子」「パパっ子」の場合、その親との離別は子供の心に深い悲しみや喪失感を与えるでしょう。
また子供の奪い合いや連れ去り、引き離しなど、親権をめぐったトラブルに巻き込まれ、傷つく子供も少なくありません。実際、そうした夫婦の争いが、子供の発達や適応にさまざまな悪影響を及ぼすことが研究で明らかになっています。
子供に動揺や悪影響を与えなくて済むことも、仮面夫婦が離婚しないことのメリット。実際、子供のために離婚せず、仮面夫婦を継続する家庭は多々あります。
遺産相続や年金のメリットも
離婚するよりも仮面夫婦を続けたほうが、財産や年金の取り分が増えやすいというメリットもあります。夫が妻より先に死亡すると仮定して、妻が手に入れる資産を比較してみましょう。
例えば、財産については離婚時の財産分与でも夫死亡時の相続でも、妻の取り分は1/2です。しかし、夫が死亡した場合の遺産相続では、妻は夫の特有財産(結婚前からの資産、両親からの相続など)も含めて1/2を手に入れられます。また年金の取り分は、離婚時の年金分割だと1/2なのに対し、夫死亡後の遺族年金なら3/4と1.5倍です。
しかし、妻より夫が先に死亡する保証はなく、夫が死ぬまで経済的に自立できないというデメリットも。さらに夫の遺言状によって状況が変わることもあるので、遺産相続や遺族年金のためだけに仮面夫婦を続けるのはリスクがあるともいえます。
参考:このまま「仮面夫婦」を続けるか、思い切って離婚するか、その得失 - 行政書士にれの木事務所
仮面夫婦が離婚をしないことでのデメリット
「離婚をせずに家族のままでいる」ということにメリットも感じる仮面夫婦ですが、そもそもベースが「愛情の欠如」のため、離婚をしないという選択肢が時にデメリットにもなります。
いつまでも新しい恋愛ができない
いくら会話がなくても、いくら愛が冷めきっていても、他に恋人を作ればそれは「浮気」です。婚姻関係を解消しない以上は、どんな理由であっても、新しい恋愛はご法度です。
異性からアプローチを受けても、それを断り、愛のない家庭に戻っていくのはかなり辛いことでしょう。離婚をしない限りは、いつまでも「現状維持」だと覚悟しておかなければなりません。
状況によっては子どもに悪影響
「パートナーへの愛はないけれど、子どものために離婚はしない」と決めている夫婦はたくさんいます。今すぐにでも別れたい気持ちを押し殺してでも、大事な子どもの気持ちを最優先させるのは親としてとても素敵なことです。
けれど、状況によっては子どもにとって悪影響となることも覚えておきましょう。
子どもの前で、夫婦が互いを避け、会話も避けていたら、明らかに不自然です。「あなたのためを思って離婚しないのよ・・・」と伝えたところで、子どもは「笑顔のないママを見ているのは僕だってつらいよ」と落ち込むかもしれません。それどころか、「僕がいるせいで、ママが幸せになれないんだ」と自己嫌悪に陥ることも考えられます。
家庭があまりにギスギス・ピリピリした空気なら、いっそのこと離婚したほうが全員が幸せになれるかもしれません。事実、「離婚してすっきりした!」と第二の人生を謳歌しているバツイチ男女は多く存在しています。
互いの存在がいつも気になる
仮面夫婦は、できるだけパートナーとの会話の機会を減らそうとします。なぜなら、そもそも会話をしたくないうえ、できれば同じ空間にもいたくないからです。
ですから仮面夫婦は、常にお互いの行動を気にしなければなりません。例えば一階に用事があっても、「玄関から物音がするわ。きっともう少し待ったら旦那が外出するんじゃないかしら」と、顔を合わさずに済むタイミングを常に狙っているのです。
愛のない相手と同居するにあたり合理的な方法ではありますが、いつでも互いの動線を考えながら行動をしなければならないので、ストレスも大きいはずです。
好きなときに、好きな行動がとれない。この不自由さが一生続くのか・・・と考えたときに、夫婦のあり方や将来について見直す方が多いようです。
心理的なストレスが継続する
円満な夫婦に比べると仮面夫婦の生活は明らかにストレスフル。夫の行動にイライラ、子供や知人の前で良い夫婦を演じるのに神経を使う、そのうえ精神的にも肉体的にも満たされない。お金や世間体など一定のメリットはあるとはいえ、心理的にキツくなってしまう場合も多いでしょう。
そうした心理的なストレスは、離婚して仮面夫婦を解消するまで、もしくは配偶者が亡くなるまでずっと続きます。乳幼児が成人するまでなら20年近く、遺産をあてにするなら一般的により長い年月、心に折り合いをつけて暮らさねばなりません。
一方、離婚すれば仮面夫婦のストレスから一瞬で解放されるので、場合によっては思い切って決断することも有意義な選択でしょう。
生活費や家事の負担も続く
心理的なストレスに加えて、生活費の支払いや家事の負担が継続することも、仮面夫婦のまま離婚しないデメリットです。
例えば、3人世帯の生活費は月30万円ほどといわれており、年間で360万円の支出になります。また1日の家事にかかる時間を3時間とすると、年間で1095時間、おおよそ45日(1ヶ月半)を家事に取られる計算です。
愛情も関心もない夫・妻との生活のために、果たしてそれだけのお金や時間を費やしてよいものか。これは仮面夫婦を続けるか離婚するかを考えるうえで重要なポイントだといえます。
仮面夫婦が世間にバレることも
仮面夫婦には、世間にバレたときに面倒というデメリットも。近所で噂を立てられたり、親や親戚からの心配がわずらわしかったり、ストレスが増えてしまいます。
ちなみに仮面夫婦だと勘付かれる夫婦には「会話が妙によそよそしい」「お互いのことを知らなすぎる」「帰省に消極的」などの特徴があるとのこと。バレないようにするには、不自然なところが出ないよう、会話や振る舞いに注意しなければなりません。
しかし、どれだけ上手に夫婦円満を演じていても、勘のいい人には仮面夫婦だと気づかれてしまうことも。またずっと神経を使いながら世間と付き合っていくこともそれなりにストレスが溜まるでしょう。
仮面夫婦の離婚が子供に与える影響
子持ちの仮面夫婦が離婚する場合、気になるのが子供への影響。研究では、年齢・発達段階にかかわらず、子供は親の離婚の影響を受けることが明らかになっています。仮面夫婦の離婚が子供に与える可能性のある影響の具体例は以下の通り。
- 乳児期:不安や抑うつなどの否定的な情緒反応、摂食・睡眠の問題など
- 幼児期:過剰な不安や恐怖、自己卑下、排泄・言語能力の後退、摂食・睡眠の問題
- 小学校低学年:引きこもりや怒りなどの否定的感情、学業成績の低下
- 思春期・青年期:非行、引きこもり、薬物使用、不適切な性行動、不登校などの学校不適用
- 成人後:結婚しないまま同棲・デキ婚など不安定な家族形成、離婚率の上昇
ただし、親の離婚が子供に与えるこうした影響の大きさは、離婚しない家庭と比べて比較的小さいという統計結果もあります。また「不安定な家庭環境から解放される」、「自立心や社会性、生活能力が備わる」など、親の離婚が子供に与えるメリットも。
そのため、子供のために離婚を我慢すべきとは一概にいえないでしょう。夫婦間の不和や争いこそが子供に悪影響を与えるともいわれているので、スパッと離婚したほうが良い場合もあるでしょう。
以下、参考3記事
父母の離婚が子の生育に及ぼす影響に関する心理学的知見について(PDF)
仮面夫婦が離婚せず関係を修復する方法
お互いに愛情も関心も持たない仮面夫婦ですが、ふとしたことで関係が回復することも。もし関係を修復する気持ちが少しでもあるなら、離婚を決断する前に歩み寄りの努力をしてみるのもよいでしょう。
一般的には以下のような方法が夫婦関係の修復に効果的だといわれています。
- 自分から話しかける、謝る
- 相手への褒め言葉や感謝を伝える
- 1日の出来事を話す、聞く時間を作る
- 夫婦で一緒に行動する機会を設ける
- お互い快適に生活するためのルールを構築する
- ペットを飼って一緒に育てる
総じて、自分のほうから積極的に行動すること、相手に夫婦関係を修復したい意思を示すことが大切でしょう。家族旅行や入院時のお見舞いなど、何らかのイベントに乗じて行動を変えてみるのもよいかもしれません。
仮面夫婦が離婚するベストなタイミング
仮面夫婦が離婚するのに適したタイミングですが、定番なのは子供が大人になったとき。子供が大学に入学して下宿を始めたとき、就職して引っ越したときなど、子育てに一区切りがついたときがチャンスでしょう。
また「生活費を渡さない」「家事をしなくなった」など、相手が仮面夫婦としての役割を疎かにし始めたときも、離婚を考えるべきタイミングです。それらは夫婦関係の「悪意の遺棄」と言って、法的な離婚原因となります。
さらに別居から5年以上経った時点も、仮面夫婦が離婚を考えるべきタイミング。長期間の別居も法的に離婚が認められるケースで、その目安が5〜10年といわれているからです。
まとめ
仮面夫婦の特徴や実態、そして離婚しないことでのメリット・デメリットをご紹介してきましたが、いかがでしたか。
様々な要因が複雑に絡み合う「仮面夫婦」。別れたくても別れられず毎日生活を共にしなければならないというのは、大変なストレスでしょう。
しかし「一度結婚したら離婚は厳禁」というルールはありません。仮面夫婦を一生続けるよりも、離婚したほうが幸せをつかめるケースは多々ありますので、タイミングを計らいながら今一度立ち止まって考えるのも悪くはないでしょう。