いじめ後遺症のチェックリストや放置するデメリット・相談先をご紹介
いじめによって受けた体の傷は時間の経過とともに癒えていきますが、心の傷は一生残り続ける場合があります。今回は、いじめ後遺症やチェックリスト、放置した場合のデメリットについて解説します。
いじめ後遺症に関する相談窓口も紹介しているので、参考にしてみてください。
いじめ後遺症とは?
いじめ後遺症は、過去のいじめで受けた心の傷によって、身体的・精神的な症状が現れる状態を指します。
大人になっても、子供時代のいじめの記憶や心の傷に苦しめられている人も多いです。体調不良や精神疾患などの症状が現れた場合、「いじめ後遺症」を発症している可能性があります。
いじめで受けた心の傷が癒えず、トラウマに
いじめ後遺症を発症するかどうかは、いじめを受けた年齢や期間、いじめの種類、加害者との関係性などによっても異なります。過去のいじめで受けた心の傷を癒すことができなかった場合、いじめ後遺症を発症したり、トラウマになったりするリスクが高まります。
大人が発症する場合もある
いじめ後遺症は、いじめを受けた子供だけの問題ではありません。過去のいじめであっても、30代、40代になってから、いじめ後遺症を発症するケースもあります。
たとえば、人間関係でトラブルが起きたり、上司や先輩からのパワハラを受けたりしたことが引き金となって、過去のいじめの記憶が掘り起こされ、当時の心の傷によっていじめ後遺症を発症してしまいます。
いじめ後遺症の具体的な症状
いじめ後遺症を発症した場合、どのような症状が現れるのか、一般的な症状をいくつか紹介します。
身体的な症状として挙げられるのは、頭痛や胃痛、睡眠障害などです。
精神的な症状として、うつ症状や対人恐怖症、ひきこもり、パニック障害、社会不安障害、摂食障害などが挙げられます。中には、自殺願望が強くなる人もいるようです。
これらの症状を放置した場合、日常生活やさまざまなシーンで支障をきたす可能性があるため、なるべく早く発見することが重要です。
いじめ後遺症を放置するデメリット
いじめ後遺症に気づかないまま日常生活を送り続けた場合、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
コミュニケーション能力や感情の制御などに支障が出ることも
いじめを受けたことで、コミュニケーション能力や感情の制御などに支障が出てしまうケースも少なくありません。いじめを受けたことによる不安や恐怖、悲しみなどの感情は、記憶として脳に刻まれます。
とくに、心身の発育段階にある未成年者がいじめを受けた場合、脳の一部が委縮するなどの悪影響を及ぼすこともあると言われています。それにより、うつ病や神経症などの発症リスクが高くなる可能性もあるのです。
他人を信用できず、ひきこもりや対人恐怖症に
いじめの経験や辛い記憶から、すべての人に対して「自分を傷つける存在だ」と強く思い込んでしまう人もいます。そのため、他人を信用できなくなり、ひきこもりや対人恐怖症になってしまうケースも多いです。
仮に、他人と接することができたとしても、誰にも心を開けない、常に騙されたり傷つけられたりするのではないかと不安に怯えてしまいます。自分から相手の本心を聞き出すこともできないため、被害妄想が膨らみ、疑心暗鬼になってしまうのです。
不眠や体調不良になることも
いじめを受けた人は、現在の人間関係でのストレスであっても、過去のいじめの記憶やそのときの感情と結びつけてしまうケースも多いです。そのため、強い不安や恐怖を感じると、不眠や頭痛、腹痛、胃痛などの体調不良につながることもあります。
精神面が原因の体の不調は、体を休めるだけでは改善しません。放置すれば、症状が悪化してしまう可能性もあるため、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。
自分に自信をもてない
いじめによって自尊心が傷つけられてしまうと、自分に自信をもてなくなります。そのため、相手に傷つけられることを極度に恐れ、相手に嫌われないように心を閉ざしたり、常に相手の顔色を気にしたりする人も少なくありません。
その傾向は、大人になっても続く人がいます。たとえば、同級生からいじめを受けた人の中には、家庭内では明るく活発な性格であっても、いじめを受けた年代の人や自分と同世代の人を前にすると、強い拒否反応を示す場合もあります。
うつ病の発症や自ら命を絶つことも
いじめ後遺症に気づかずに放置し続ければ、うつ病を発症する場合もあります。最悪のケースでは、自ら命を絶つ選択をする人もいます。過去のいじめが直接的な原因ではなくても、日常の出来事や些細なミスによって、いじめを受けた際の記憶や感情が引き金になる場合もあるのです。
いじめ後遺症かどうかチェックしてみよう
いじめ後遺症かどうかの診断は、メンタルクリニックでの診察が必要です。しかし、もしかしたら、いじめ後遺症かもしれないという可能性を知る上で、次のチェック項目がヒントになるかもしれません。当てはまる項目が多いほど、いじめ後遺症の可能性が高いと言えます。ぜひ参考にしてみてください。
- なるべくなら他人と関わりたくない
- 他人がいると楽しめない
- 人が集まる場所は苦手で、極度に緊張する
- 対人関係などに強い不安を感じる
- 中高生の制服を見るだけで過去のいじめを思い出す
- 笑い声がすると、自分がけなされていると感じる
- 自分に自信がもてない
- 自分自身をけなしてばかりで、褒めることができない
- 自分に価値がないと感じる
- 生きている意味がないと感じる
いじめ後遺症かもしれないと思ったときの相談先は?
もしかすると、自分はいじめ後遺症かもしれないと思った場合、どこに相談すればいいのでしょうか。ここでは、いじめ後遺症の克服への一歩を進めるための相談先を紹介します。まずは、以下を参考に相談から始めましょう。
臨床心理士や医師などの専門家に相談する
いじめ後遺症は、精神面での治療を必要とすることも多いため、治療を受けるなら臨床心理士や医師などの専門家に相談することをおすすめします。
臨床心理士は民間資格ではあるものの、内閣府から認可を受けた「公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会」の認定資格です。また、「公認心理師」という国家資格をもつ専門家への相談も有効です。
心理カウンセラーへの相談も可能ですが、カウンセラーの経験や知識などに個人差があるため、なるべく、いじめ後遺症の知識や治療実績が高い信頼できる専門家を探しましょう。
専門家による相談窓口に連絡する
国や自治体、民間などで、専門家による相談窓口を設けています。誰に相談すればいいのか、いじめ後遺症を克服するために最初に行うアクションがわからないという人もいるかもしれません。該当する人は、以下の電話相談窓口や匿名で相談できる医師相談サイトなどを活用してみてください。
いじめ後遺症の克服プログラムに参加する
心療内科などのクリニックに行くのは気が引ける、自分でできることから始めてみたいという場合は、いじめ後遺症の克服を目的にしたプログラムや講演などへ参加してみるのも1つの方法です。
メンタル面の治療方法は、認知行動療法などを始めとする種類が多くあるため、手当たり次第に参加するのはおすすめできません。初診を受ける前に、どのような種類があり、どういった治療法が用いられるのかを知っておく必要があります。
書籍や関連サイト(医療機関や国などで認可している団体)などで、心理療法の種類や治療法、特徴などの基礎知識を入れてから、参加するプログラムなどを決めるようにしましょう。
いじめ後遺症を克服するには過去に立ち向かう勇気が必要
いじめ後遺症の人にとって、いじめは過去の出来事ではありません。現在もなお、いじめの記憶によって心が傷つけられています。いじめ後遺症を克服するには、非常に辛く苦しいことですが、過去のいじめに向き合う必要があります。
とはいえ、1人で克服するのは難しいため、専門家や医療機関で治療を受けましょう。また、家族や親しい友人、同僚に理解してもらい、周囲からサポートを受けることも大切です。焦らず、時間をかけて、少しずつ克服していきましょう。