子供がいじめられているかのチェック項目と心のケアと相談窓口
子どものいじめは、あなたのお子さんにもあり得ることです。いつもと様子がちょっと違う場合でも、いじめのSOSサインを出している可能性があるのです。
いじめが発覚すると、責任の所在を問うことがクローズアップされてしまいます。もちろん、今後同じようなことが起きないように原因や対策を考えることはとても大切なことです。
しかし、いじめを受けた子供への心のケアを何よりも先に考える必要があります。体に受けた傷は時間と共に癒されますが、心に負った傷は目に見えないため、事態の深刻さが分かりにくいのです。
子供の心のケアを怠ってしまうと、心を病んでしまい、最悪の場合、尊い命が失われてしまうこともあります。いじめを受けた子供への心のケアと親と子のサポートをする相談窓口をご紹介します。
いじめられている子供の心理とは?
いじめを受けた子供の心には、深く傷が残されます。傷の深さは個人差があり、その深さを推し量る指標は存在しません。ただ、一般的にいじめを受けた子供に観られる心理的な特徴があります。
たとえば、以下の通りです。
- 自分を責め、自分を労われなくなる
- 自信がもてなくなる
- 人間不信になり、自分の殻にこもってしまう
- 被害妄想が強くなる
- いじめられた事実を恥ずかしいと感じる
- いじめの事実を知られたくないと感じる
- 家族や友人など親しい人にいじめを知られたくない、心配かけたくない
近年、いじめを苦にした子供の自殺のニュースをよく目にします。いじめられる原因が自分にあるという強い思い込みやいじめられていると知られたくない、という心理から精神的に追い込まれ、命を絶ってしまうことが考えられます。
大人であれば、いくらかの逃げ道を自ら選ぶことができますが、精神的にも未成熟な子供の場合、視野が狭く、持っている選択肢が少ないため、家族や周囲による心のケアが必要なのです。
子供がいじめられているかを発見するためのチェック項目
両親が忙しいと子供と接する機会が減ります。そのため、子供と接する時間だけで兆候を読み取らねばなりません。また、子どものいじめの兆候は時間帯で異なっています。それぞれの時間帯に起こりやすい兆候があり、あらかじめ知っておくと見つけやすいです。それでは、朝、夕、夜の時間帯でチェック項目を列挙していきます。
朝
- お腹を壊しやすくなった。
- 朝起きてこなくなった。
- 布団からなかなかでてこない。
- 遅刻するようになった。
- 朝ご飯をたべなくなった。
- 保健室に行くようになった。
- 学校を休みたがる。
朝は体調変化が起きやすく、それとともにいじめの兆候が現れやすい時間といえます。学校に行きたくない様子が見られたら、休ませてじっくり話を聞くことも、ときには必要です。
夕方
- 帰りが遅くなった。
- 服がいつもより汚れている。
- 携帯に電話をかけてもでない。
- 以前は友達と下校していたのに最近は一人。
- 放課後に学校へ遊びに行かなくなった。
- 習い事を休みがちになった。
- お小遣いをせがむようになった。
- 友人と下校のさい荷物をもたされている。
- あざや傷が目立つ。
- 変わったあだ名で呼ばれている。
夕方は教師の管理下を離れる時間帯であるため、いじめが起きやすい時間です。いじめの痕跡がないか、あるいは、いつもと違った行動パターンが無いか注意深く観察しましょう。
夜
- 兄弟間で喧嘩が増えた。
- ゲームをしなくなった。
- 食後はすぐ布団に入ってしまう。
- 携帯電話をこそこそ見ている。
- ご飯を食べる量が減った。
- 教科書やノートがしわくちゃになっている。
- 深夜に起きていることがある。
- テレビを見なくなった。
- 部屋に閉じこもるようになった。
夜は子供が次の日に備える時間であり、いじめられている場合は憂鬱に感じやすい時間でもあります。嫌なことを考えていれば睡眠も浅くなりますし、夜中に起きている時間が増えるのも当然です。反対に、嫌なことがあると寝すぎてしまう子供もいます。どちらにせよ極端に変わった変化がないかを読み取る必要があります。
どのような時期に兆候が表れやすいか
クラス替えや転校したとき
クラス替えは子供にとっては学校生活を快適に過ごせるかどうかが決まる重大イベントです。いじめっ子がいるクラスになったら、どのような子供でも落ち込みますし、心穏やかでない状態になります。
また、転校したばかりの子供はそれ以上に環境の変化を体験します。学校の教師も誰を頼ればよいかわからないし、今まで仲が良かった友達もすでにいません。クラスにうまく打ち解けらずに、いじめにあう可能性も高くなるので、しっかり保護者が見守ってあげなければならないタイミングといえます。
新年度の始まりは変化が多く、兆候が出やすい時期なので見逃さないようにアンテナを張っておきましょう。
塾に通いだした時期
塾に通い始めると生活スタイルが変化します。特に大きな変化が放課後に友達と遊ぶ時間が減ることです。すると、本人がいないことによる開放感から、陰口をたたかれてしまうことがあります。仲が良いと思っていた友達も、グループの雰囲気に逆らえず、一緒に悪口をいい始めるという事態はありがちです。
このように、塾に通いだした後も交友関係が変化することがあり、いじめの兆候が出やすい時期として認識しておくべきです。
長期休みの半ば
子どもにとって休み明けは、休みが楽しければ楽しいほど、学校に登校することがつらくなってしまうものです。それが極端になったケースが休み明けの子供の自殺です。
自殺総合対策センターが2018年8月に公表した「昭和48年から平成27年度における通学適齢期の自殺者数に関する分析」では8月上旬、9月上旬に自殺者が多いと発表しています。また、中高生に関しては9月1日の自殺者数が最も多いとのことです。最近では8月下旬の自殺者数も増えていることから、より幅広い期間で対策を打つ必要があるとしています。
従って、いじめによる自殺を防止するには夏休み明けでは手遅れです。8月上旬~8月下旬までに子供からいじめの兆候を発見しなければならないことがわかります。夏休みの子供には過保護であるくらいがちょうどよいかもしれません。
部活動が変わった時期
いつもの部活動が退屈になり、他の部活動に変える子供もいます。部活動は本来同じものに興味を持っている人が集まりやすく、もし、新しく入った部活動に興味が持てなければ、考え方が合わない人間関係を継続しなければならなくなります。
このタイミングでいじめの兆候が出始めることがあります。価値観が合わないことにより、いざこざが起きやすくいじめにつながる場合があるからです。子供が部活動を変えると言い出したらその後の経過には注意しましょう。
いじめの兆候を読み取ったらどうすればよい?
いじめの兆候を読み取ったら次に行うべきは事実確認です。子供を問いただしても、頑なにいじめについて否定する場合もあり得ますし、いじめられていると公言しても学校側が信じてくれないことがあります。
どちらにせよ、いじめがおこなわれているかどうかを示す証拠を探す必要があります。しかし、証拠を集めるのは素人では困難です。騒ぎを大きくしてしまうことで子供を傷つけたり、加害者から警戒され、証拠を隠されてしまったりする恐れがあるからです。証拠を探すのであれば証拠調査士や探偵事務所などの専門機関のサポートを受けることをおすすめします。
いじめに気付くために子どもの様子をよく見る
子どものいじめに気づいてあげるには、子どもの様子をよく見ることが大事です。ちょっとした変化にも、SOSサインが隠れていることがあるからです。
見た目や体調を見る
子どものいじめのSOSサインが分かりやすいのが、見た目や体調などの変化です。
主な見た目や体調の変化としては、
- 元気がない
- 不自然に明るい
- 無視された
- 持ち物が汚れている
- 持ち物が壊れている
- 失くしものが増えた(持ち物が減った)
- ボーっとしている
- イライラしていて余裕がない
- 体重が減ったり増えたりする
- よくけがをしてくる
などです。
いじめられていると自然と元気がなくなります。そのため、ボーっとしたり、イライラして余裕がなくなったりします。また、逆に不自然に明るい場合も注意が必要です。なぜ明るく振る舞うのかというと、子どもは親が思っている以上に親に心配をかけたくないという思いが強いからです。必死にいじめられていることを隠そうとします。
我が子のことなので、心配のあまりいじめられているのかどうかをはっきりと聞きたいという気持ちもあるかと思います。確かに、いじめられているかどうかをはっきりさせることも大事ですが、子どもが話しやすい雰囲気を作り、子どもの気持ちに寄り添って話を聞く必要があります。
言動・行動を見る
子どものいじめのSOSサインは、言動の変化からも気づいてあげることができます。
主な言動の変化としては、
- 学校や友達のことを話さなかったり、話したがらなかったりする
- 口数が減ったり、多くなったりした
- 声のトーンが違う
- 遊びに行かなくなった
- 友達が来なくなった
- 金遣いが荒くなった
- 学校に行きたがらなかったり、休みたがったりする
などです。
親にいじめられていることを気づかれてしまった場合、みじめで辛い気持ちになってしまうため、学校や友達のことを話したがりません。また、友達との関係がうまくいかなくなり、いじめに発展してしまうケースもあるので、友達と遊ばなくなったりした場合にもいじめられている可能性は潜んでいます。
そして、金遣いが荒くなったこともいじめによるものである可能性が高いです。これはなぜなのか、考えられる状況は主に2つあります。1つ目は、いじめによるストレスを発散させるためにお金を使っている場合が考えられます。また、2つ目は、いじめっ子から恐喝されている場合が考えられます。金遣いが荒くなったら怒るのではなく、どうしてなのかを優しく聞いてあげましょう。
いじめに気付くために子どもとよく会話をする
子どものいじめに気づいてあげるには、普段から子どもとよく会話をするということが大事です。普段の何気ない会話から、SOSをキャッチすることができるからです。
友達のことを聞く
友達のことを聞く際は、直接的に聞いてはいけません。特に無口な子や、思春期の子はあまり友達のことを話したがらず、「別に」と口を閉ざしてしまうことが多いからです。
例えば、「お母さんは子供の頃、よく鬼ごっこして遊んだけど今もやったりする?」などといった自分のことから話し、自然な会話の流れを作ります。そして、「〇〇ちゃんは最近元気にしてる?」など間接的に友達のことを聞きます。このようにすることで、子どもは安心して話しやすくなるので、いじめに気づいてあげることができます。
もし、いじめられていた時の対応は?心のケアが大切
もし、いじめられていた時、親だとどうしても不安になってしまいます。しかし一番不安なのは、子どもです。そんな不安な子どもに対応するにはどんな対応が望ましいのでしょうか。
子どもの話をよく聞いてあげる
いじめの事態がすぐにどうにかなる訳ではなくても、子どもの不安な気持ちをしっかりと聞いてあげるだけで子どもの気持ちは楽になります。大事なのは否定をせずに、子どもの気持ちに共感的になって聞くこと。子どもが「辛い」といったら、「そっか、辛いんだね」と共感的に反応してあげましょう。
家をくつろげる場所にする
子どもは家と学校しかほとんど世界を知りません。もし学校でいじめられていた場合、家もくつろげない場所だと子どもは追い込まれていきます。そのため、家だけでも安心してくつろげる場所にする必要があります。家で1人、のんびりと過ごせる環境を提供してあげましょう。また、気分転換に少し遠くへ連れ出したりするものよいでしょう。
担任に相談する
いじめは、担任に相談して解決することも多いです。そのため電話で一度相談し、改善が見られなかった場合は、面談を依頼しましょう。そして、面談の際はきちんとした服装で行くことで、事の重大さを認識してもらうことができます。
努力しても改善されない場合は転校も考える
大変悔しい話ですが、努力しても改善されない場合は転校するという選択肢も考えなければなりません。深く傷ついて後戻りできなくなってしまうくらいなら、時には逃げることも大事です。それが、子どもを守る方法だからです。人間関係をリセットすることで、新たな一歩を踏み出すという選択肢もあることを忘れないでください。
学校に行く道以外にも選択肢があることを伝える
いじめを受けた子供に対し、世間や学校は復学させる選択肢だけを提示してくることがあります。とくに、義務教育の小学生や中学生の場合はその傾向が高いといえるでしょう。
しかし、学校でいじめを受けた子供を無理やり復学させては、子供をさらに深く傷つけることになります。今は学校を休み、子供の心のケアをすることが最善の策です。
とはいえ、現在は学校に行く道以外にもいくつかの選択肢から選ぶことができます。
たとえば、以下の選択肢が挙げられます。
- 転校する
- フリースクールに通う
- 通信制の学校で学ぶ
- 不登校の子供を対象にした集まりに通う
- 今は休養することを考える
- 子供が興味のある習い事やスポーツなどに通う
このように、新しい人間関係を築くサポートをしてあげることで、学校以外にも子供自身の居場所があることを気づかせてあげることができます。
子供が望むことを尊重する
いじめを受けた子供に無理やり話を聞き出そうとしたり、子供の代わりに学校やいじめの加害者の家に怒鳴り込みしたりすることは、かえって子供を傷つけてしまう恐れがあります。
なぜなら、いじめを受けた子供はいじめられた事実を「恥ずかしい」「自分が情けない」と感じていることが多いからです。誰もいじめを大ごとにされることは望んでいません。だからこそ、子供が望むことを尊重してあげることが大切なのです。
子供の方から話をしてくれるのを待ちましょう。そして、話をしてくれたら、勇気を出して話してくれたことを褒めてあげましょう。
いじめられている子供に対する周囲の接し方
ここでは、いじめを受けた子供に対し、周囲の人がどう接すればいいのかについてご紹介します。
表面上の優しさや子供と距離を置かない
いじめを受けた子供に対し、「被害者」「可哀想な子」といった印象を受ける人も多いことでしょう。そのため、当たり障りのない優しい言葉をかけてしまいがちです。人によっては言葉もかけず、子供と接することすら避けてしまう人もいます。
いじめで心に傷を負った子供は、相手の言葉や態度にとても敏感です。上辺だけの優しい言葉や自分を避ける行動は、子供をさらに傷つけてしまう恐れがあります。
偏見や差別を持たず、普通に接する
いじめを受けた子供に対し、偏見や差別を持たず、あくまでもいつも通りに接してあげることが大切です。なぜなら、変に腫れ物に触られるような言動は、子供自身にも気を遣わせてしまい、自分が原因で周囲の態度も変わってしまったのだと感じてしまうからです。
いじめを受けた子供と接するときは、これまでと変わらない態度で接してあげましょう。あえて、いじめの話題を持ち出したり、避けたりする必要はありません。
子供がいじめの話題を避けているならそれ以外の話をし、子供からいじめの話題を持ち出してきたら、子供の話に耳を傾け、否定することなく、すべてを受け入れてあげればいいのです。
いじめられている子にしてはいけないこと
励ます
どうして励ますのがいけないのかと、疑問に思われた方もいるかと思います。なぜかというと、いじめられている子は頑張って必死にいじめに耐えているからです。励まされても、もう頑張れないところにまできてしまっている可能性もあります。そのため、励ますのではなく、ただ話を聞いてあげましょう。
否定する
「お前が〇〇だからいじめられるんじゃないのか」などと否定して追い詰めるようなことはしてはいけません。ただでさえ言いづらいのを頑張って話しているのに、そのように対応されたら、子どもは「せっかく話したのに分かってくれないんだ」と落ち込んでしまいます。「分かってくれない」という気持ちは心を蝕んでしまうのです。
いじめを受けた子供と親のための相談窓口
いじめによって苦しむのは被害者である子供だけではありません。親や家族、友人など子供と親しい関係にある人も言葉にならない苦しみを抱えているものです。
とくに、世間体を気にする人は家庭内で解決しようとしてしまいます。しかし、家庭内だけで解決しようとしても、親しい関係だからこそこじれてしまうことも少なくありません。
そんなときは、国や民間の相談窓口に相談することをおすすめします。相談窓口では、いじめや不登校などに関する専門家に相談することが可能です。その一部をご紹介します。
- 文部科学省「子供(こども)のSOSの相談窓口(そうだんまどぐち)」
- 相談窓口|こども家庭庁
- 特定非営利活動法人:子どものための相談窓口 | ストップいじめ!ナビ
一人で悩まず、家庭内だけで解決しようとせず、上記の相談窓口の専門家に相談しましょう。
まとめ
子供はいじめられていることを親にも相談できず、ひとりで苦しんでいる可能性があります。そんな状況をいち早く察知して挙げられるのは、ご家族です。
いつもと様子が違うことを察知し、家庭内で子供に対してケアしてあげることが、いじめられている子供にとっては救いです。
親が子供をよく観察してあげてください。