学校で必要とされる3つのいじめ対策と学級でいじめが起きないようにするために教師が行うべき対策

教師

いじめられた子供は、自分自身で解決できることもあります。しかし、集団によるいじめに関しては、周囲の協力がないと厳しいといえます。では、誰が協力してくれるのかと考えれば、まず、保護者がいます。ただ、子供の味方といえども、学校で一緒に生活をするわけではありません。その点で、少し力不足だといえます。

また、正義感のある友人が助けてくれるというケースもよく聞く話です。しかし、必ずしもそのような友人が学校、学級にいるとは限りません。

したがって、いじめを止めることができるのは学校であり、そこで働く教員しかいません。学校はいじめを防ぐために、あらゆる対策をうつ必要があります。しかし、やみくもに対策をしてもいじめをなくすことは難しいようです。

今回は、学校、学級でいじめが起きないようにするために教員が行うべき対策についてまとめていきます。また、対策を打っても実際にいじめが起きてしまうこともあります。そのような場合の対処方法についても触れていますので、合わせて参考にしてください。

いじめは「いつでも」「どこでも」「どんな集団でも」起っている

いじめは何も、学校、子供の集団だけで発生するわけではありません。大人や高齢者、障碍者や友人同士の集団でも発生しています。いじめそのものは決して無くならず、あらゆる集団で発生する可能性があります。

その理由はとても単純で、いじめは人間の本能と関係があるからです。いくつか説をご紹介します。

1、もともと、人間は弱い動物であり、他の動物に打ち勝つめに集団を作る必要がありました。その集団は強くなければならず、弱者を淘汰する必要があったとする説。

2、共同体での結束を強めるためには立ち向かうための「脅威」が必要となります。その脅威は外にあるのではなく、実は共同体の内部の構成員にあり同じ考え、感情の共有がなされないと結束が弱まるため、異質な外見や発言をする者に対して制裁感情が働くという説。

3、マズローの5段階欲求説にも述べられていますが、人間には集団に対する所属欲求や他者から認められたいという承認欲求があります。それが過剰に働くと集団のトップに認められたい、集団と歩調を合わせたいという考えから、弱者を見つけ出し攻撃するという説。

4、相手を支配したい、正義を達成したいという欲求には達成されたときに快感を伴うため、ターゲットを見つけては支配したり罰を与えたりするという説。

つまり職場でも、ママ友同士でも、大学のサークルでもいじめは起こりうる、実際に起きているという現状があるのです。

ではなぜ、特に「学校」という集団においていじめ対策が必要なのでしょうか。

自分で「いじめ」から身を守ることができない児童・生徒

学校でいじめ対策が必要な理由の一つとして「自分で離れることができない集団である」ことが挙げられます。

職場やママ友、サークルなどでは、集団への加入・離脱はその当事者が決めることが可能です。もちろん決断が必要な場合もあるでしょうが、大人であり社会経験も積んでいるわけですから自分で行動し責任を取ることができます。

一方、学校については義務教育ということもあり、自身で集団から離れることは難しいと思われます。未成年ということもあり、自分自身で決断したとしても両親や教師、その他関係する大人がNOと言えば、その集団から抜け出すことはほぼ不可能でしょう。

児童・生徒は成長の発達段階にあることも理由の一つです。脳も成長過程にあり、どうしても感情のコントロールが難しい部分があります。また、人間が動物であるが故の攻撃性・嗜虐性を社会規律や他者を思いやる心で抑えることを学んでいる過程でもあるので、いじめをしてしまうこともあるでしょう。

さらに、年齢による社会経験の不足も挙げられます。自分の身に危害が及びそうになったとき、いじめの初期段階で相手が関係性のパワーバランスを崩そうとしたときにどう対処すれば良いかわからず、そのままいじめに巻き込まれていくケースも多いでしょう。

学校という組織にも一因があります。学校においていじめが発覚すると校長や教師の責任問題になり、自身の立場が危うくなってしまう側面があります。

学校は児童・生徒の保護者もある意味組織の一員と言えるでしょう。そうなると、加害者側、被害者側の対立や様々な利害関係が噴出し、問題を複雑化してしまうこともあるのです。

つまり、児童・生徒だけでいじめの問題を解決することはできないのです。

学校で必要とされる、3つのいじめ対策

では具体的に学校において、どのような対策を行えばよいのでしょうか。大きなポイントとしては3つあります。

「学校が主体的にいじめ対策を行うこと」「集団へのアプローチを行うこと」「子供も社会の一員であるという自覚を持たせる教育を行う」の3点です。

学校が主体的にいじめ対策を行うこと

これは大原則とも言えるでしょう。学校にはその組織体制から大きな力を持っています。いじめの初期段階に見て見ぬふりをしたり、いじめの事実を隠蔽しようとすれば事態は大きく悪化してしまいます。

文部科学省の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」にもある通り、まずはいじめの初期段階を見逃さないこと、適切な対応を行うことが大切です。学校側が真摯な態度を取るならば、児童・生徒だけでなく保護者、関係機関も解決に向けて進んでいくことができます。

集団全体へのアプローチを行うこと

ともすれば、いじめを解決しようとして加害者、被害者とその保護者のみにアプローチしてしまう場合があります。

いじめは集団で起っているものであり、クラスの雰囲気、観衆的な生徒や知らないふりをする傍観者など、すべての要因が重なって発生するのです。クラスの児童・生徒全体に対する聞き取りや調査を行うだけでなく、保護者全体への働きかけも重要です。

児童・生徒は保護者のもとで成長しています。集団全体へのアプローチはいじめ全体の解明につながります。残念ながら、全体に対するアプローチを行っている教師や学校は半数以下というデータもあります。それぞれの事情に配慮しつつも、集団全体に対して協力を求めることは必要なのではないでしょうか。

子供も社会の一員である、という自覚を持たせる教育を行う

児童・生徒が社会性を身につけ、他者にたいする優しさや相手を理解しようとする心は、教育によって養われます。

現在の道徳教育では限界があるならば、社会活動にボランティアを取り入れる、SST(ソーシャルスキルトレーニング)などのグループワークを行うなどの方法もあります。

その核となりうるのがスクールカウンセラーです。各校に1名ずつ専任のスクールカウンセラーを配置するだけでなく、出勤日数も増加させることができれば、いじめ減少に大きく貢献してくれるのではないでしょうか。

学校におけるいじめ対策が必要な理由と対策方法を述べましたが、その他にも個人ノートをやりとりする、環境を美化することによりいじめにつながるような行動を防ぐ(割れ窓理論)など日々の取り組みも重要となります。

いじめ問題が減少するか否かの分岐点にちょうど今、さしかかってきているのかもしれません。

学級でいじめが起こる原因は?

いじめが学級でおきる原因は間違いなく一つです。教師の管理能力不足です。

仮に、担任が怖い学級では、まず、いじめは起きにくいです。興味本位でいじめをする楽しさより、担任に怒鳴られるというリスクが上回るからだといえるでしょう。また、担任に威圧感がないにしても、学級でいじめが起きない環境が整えられていれば、いじめは減ります。いじめをしようとするきっかけがなければ、いじめは起きないからです。

このように、担任の学級運営次第でいじめは学級から撲滅できます。

いじめは、いじめる側が悪いという考えも、たしかにあります。しかし、学級においては、いじめる側も大人ではないため、責任能力があるとはいえず、むげに責めることはできません。

結論として、本当にいじめに対する責任を負うべきは、いじめを減らす対策をせず、いじめを起きる環境を放置した教師といえます。

学級で教師ができるいじめ対策

フレンドリーにしすぎない

教師が学級でフレンドリーにふるまうことで、生徒と親睦が深まり、学級運営がスムーズになることがあります。しかし、何をしても怒られないという雰囲気が形成されてしまいがちであり、いじめが起きる確率は高まるといえるでしょう。

いじめが起きる可能性があるのであれば、いかに学級運営がうまくいこうが、そのような振る舞いは辞めるべきです。最低限度の距離感をわきまえて生徒と接することが肝要です。

問題児から信頼を得る

どのクラスであれ、暴力的であったり、言葉遣いが荒かったりする問題児は何人かはいるものです。クラス内で権力を持っている場合がほとんどなので、きっかけがあればいじめを始める可能性は高いといえます。

しかし、教師が、あらかじめこのような生徒から信頼を得ることができれば、その懸念も払しょくされます。それどころか、いじめられやすい生徒を守ってもらうこともできるかもしれません。

気の弱い子のサポート

生来から気が弱く、いじめにあいやすい生徒はいてもおかしくはありません。そのような生徒には教師のフォローが不可欠です。

定期的に声をかけ、本人が困っているときに、相談しやすいようなきっかけを増やしてあげましょう。また、合わせて、生徒の私物に落書きがされていないか、変わったあだ名で呼ばれていないかなど、さまざまな視点から観察して、いじめが起きていないかをチェックすることも大切です。

ただし、あまりにも過保護になりすぎると本人の成長の機会を奪ってしまうことにもなります。いつでも助け舟をだせる程度にかかわっていくとよいかもしれません。

学級でいじめが起きてしまった場合の対応方法

いじめとして認めきる

担任は授業、イベント、部活動などで多忙です。いじめが起きていても、いじめとして認めずに、やり過ごしてしまうというケースがあります。いじめは本人にしかわからない苦しみがあり、安易に放置した結果、重大な問題に発展する可能性は高いです。

からかいやけんかなど、些細なケースだと思われることでも、本人がいじめられたと思っている以上は、いじめだと認めきるような対応をしましょう。

教員同士でいじめの事実共有

自分の学級のことは自分の力で解決したいと思いがちですが、いじめが起きてしまった場合は、必ずほかの教員と共有しましょう。同じ教科の先生に、授業を代わりに担当してもらったり、自習監督をしてもらったりすれば、いじめの解決に重点的に取り組めます。

また、指導経験豊富な校長や副校長などの管理職から、いじめの解決方法についてアドバイスを受けることができます。いじめの解決方法は状況によって千差万別です。一人でも多くの教員と知恵を出し合い、解決にあたりましょう。

保護者を交えずに被害者と加害者に個別で面談

いじめが起きてしまった場合、加害者、被害者から個別に事情を聴きましょう。このとき、いったん保護者を交えないことが一つのポイントです。子供は、いじめられていたことを親に知られたくないものです。保護者のいる前で悲惨ないじめの内容を詳述させるのは酷だといえます。加害者も親を落胆させるような行為について、話したくないものです。

したがって、正確な情報を効率よく聞き出すために、保護者を交えない個別面談をおすすめします。

保護者の具体的な対策を提示する

保護者は、いじめを防止できなかったことに対して、担任に不信感を募らせます。そのため、誠心誠意、今後の対策について話し合う姿勢を見せましょう。

保護者が望むのはいじめの解決です。いじめが起きた事実を認定し、対策を講じることを約束すれば、同じ目的に向かって協力してくれます。いつまでにどのような対策を打つのか、具体的に伝えることが肝心です。

加害者がいじめを認めない場合にアンケート調査をする

面談をしても加害者がいじめを認めない場合もあります。その際は、被害者の保護者に納得してもらうためにも、クラス内でのアンケート調査が必要です。ただし、方法を間違えると別の問題に発展する場合や、効果が出にくい場合があるので注意点を挙げていきます。

匿名の記入方式でアンケートを実施する

アンケート調査は必ず匿名で行いましょう。生徒がいじめを認知していたとしても、いじめの加害者に目を付けられることを恐れ、正しい情報を応えてくれない可能性があるからです。

また、万が一アンケートを紛失した場合に、記入者がわからなければ、余計なトラブルは起きにくいといえます。実名での調査は決して行わないようにしましょう。

アンケートを教室で一斉に書かせない

アンケートを匿名にするだけでは、まだ安心できません。学級では生徒の机同士の距離が近いことが大半で、視線を少し傾けるだけでも、内容を把握できてしまいます。自宅にアンケートを持ち帰らせたうえで記入させ、封筒に入れて提出させるといった方策が無難です。

保護者とアンケート項目を考える

アンケートを実施しても、保護者の望む回答が得られない場合があります。そのため、あらかじめ保護者と書面の質問項目をすり合わせる作業が必要になります。

例えば、いじめの被害内容をあえて乗せて、からかいかけんかのどちらだと思いますか?というような質問を加えたりすれば、実りのある情報が得られます。

また、解決に向けて保護者とともに共同作業をすることで、担任としての信頼を取り戻すことにもつながります。

証拠の見つけ方を探偵事務所に相談するのもあり

アンケート調査を含め、さまざまな対策を講じても、加害者のいじめが認められず、事が膠着してしまうこともあります。その際は、いじめの存在を確定づける証拠が必要となります。

しかし、教員という立場で証拠を集めるのは、生徒のプライバシー侵害の観点から、好ましいとはいえません。そのような場合は、保護者が適切な証拠集めの方法について探偵に相談するというアイデアもあります。法律的な観点から証拠集めのアドバイスをしてくれます。

もし、学級内でいじめを解決できない場合、最終手段として、いじめられている親が探偵の利用を検討してみるのもひとつです。

いじめ対策と調査の料金・費用相場

1日あたりの相場 費用総額の相場
いじめ対策と調査 11万円 69万円

※実際に探偵ちゃんで紹介した探偵事務所に依頼した人の事例を元に算出しています。