ストーカーは治療対象?加害者の回復治療とは

医者

ストーカーの加害者への治療や支援の取り組みが日本でも行われるようになりました。しかし、ストーカーはそもそも治療対象なのか、治療や支援の必要があるのか疑問に思っている人がいるかもしれません。

そこで、ストーカー加害者への回復治療や支援の必要性や治療プログラムなどについてご紹介します。

ストーカーは治療対象なのか?必要性を解説

ストーカーは果たして治療対象なのか、詳しく解説します。

ストーカー加害者は精神状態が異常なケースが多い

ストーカーは精神状態に異常が見られるケースが多いです。そもそも、普通の精神状態であれば、ストーカー行為をすることはなかなか考えにくいです。たとえ、ストーカー行為をしそうになったとしても、理性でそれを食い止めることができるはずです。

しかし、ストーカー加害者は、精神状態が普通ではなくなっているため、相手に恐怖を与えるような行為をしてしまいます。

自力でストーカー行為をやめることは難しい

ストーカー加害者は、必ずしもストーカー行為を楽しんでいるとは限りません。実際には、ストーカー行為をやめたくてもやめられなくて悩んでいる加害者もいます。自分の行為が犯罪であることを自覚している加害者も中にはいます。しかし、加害者が自分の意志だけでストーカー行為をやめることは難しいとされています。精神状態が通常等はおかしくなっていて、依存症のような状態になっているからです。たとえば、アルコール依存症の患者が、お酒を飲んではいけないと思っていても飲んでしまうのと同じ状態だと考えられます。

警察が加害者へカウンセリングや治療を勧めている

ストーカーは最終的に警察に警告を受けたり、逮捕されたりするケースが多いです。そこで、警察のほうから加害者に対してカウンセリングや治療を勧めるケースが増えています。ストーカー加害者は、たとえ逮捕されたとしても、再犯する可能性があることを警察は理解しているからです。

その他に警察では、加害者の近しい周りの人が、ストーカー行為の加害者に対してカウンセリングや治療を受けさせたいという相談にも警察は応じています。

諸外国では加害者のサポートを行う専門医療機関が数多くある

基本的にストーカーへの対策は日本よりも海外のほうが進んでいます。たとえば、アメリカには、ストーカー加害者のサポートを行うための専門医療機関が数多く存在します。日本でも数は少ないものの、加害者への専門治療を行う医療機関はあります。

ストーカー加害者だけではなく、DVや性嗜好障害、窃盗癖などで加害者になった人の治療も行われています。医学的、心理学的なアプローチによる治療が行われて、そのおかげで社会復帰に成功したという事例もあります。日本にも存在しますが、今後は日本でも加害者のための専門医療機関はさらに増えていくと予想されます。

ストーカー治療の専門外来がある

日本にはストーカー加害者がたくさんいて、これ以上被害を増やさないために治療することは大切です。そのために、ストーカー治療の専門外来を設けている医療機関が日本に存在します。ストーカー治療に特化していて、ストーカー治療プログラムを用意しています。ストーカー加害者が通院すれば、専門的な治療を受けることができます。ストーカー加害者が自ら通院するケースもあれば、警察などが加害者に対して専門外来の受診を勧めるケースもあります。ストーカー治療の専門外来があることはあまり知られていません。

早期発見、早期治療に努めている

ストーカー治療プログラムでは、ストーカーの早期発見、早期治療に努めています。すでにストーカー加害者として犯罪行為に手を染めている人だけではなく、ストーカー予備軍とされる人も治療対象としているのが特徴です。まだ、軽微なストーカーといえるレベルであれば、専門治療を受けることによって、すぐに回復する可能性があります。もちろん、重度のストーカー加害者に対しても、専門的な治療を施して、早期治療を目指しています。基本的に入院治療をするのではなく、通院治療をするケースが多いです。そのため、仕事や家事など普段の生活をできるだけ継続しながら治療に取り組めます。

保険適用で医師の診察や個別の対応を受けられる

ストーカーの専門外来における治療は、基本的に保険適用されます。実際にストーカー行為をしていて、自分でそれをやめられない状態であれば、病的とみなされるからです。普通の社会生活を送ることが困難な精神状態にあると診断されれば、それは治療を受けるべき対象とされて、保険適用の範囲内と考えられます。

基本は依存症の治療

基本的にストーカー加害者の治療は、依存症の治療として行われています。たとえば、アルコール依存症などの治療と同じようなものと考えるとよいでしょう。依存症は近年注目される機会が増えており、これまで知られなかった新しい依存症も増えています。ストーカー加害者は、ある意味では人間関係に対して依存しているとみなせるのです。このような加害者には、道徳的な説教をしても、刑罰による対処をしてもあまり効果がありません。それよりも投薬や精神療法のほうが効果的であるとされていて、ストーカー加害者への治療が注目されています。一般的な依存症と同じような治療が行われています。

具体的なストーカー治療プログラムの内容について

ストーカー加害者の治療の具体的な方法について解説します。

内観療法

精神療法のひとつで日本人が生み出した方法です。国際的にも一定の評価を得ています。患者の身近な人についてのこれまでの関わりを繰り返し思い出させるという内容です。親や兄弟、配偶者のことを思い返すことで、自分や他者に対する理解や信頼を深めていきます。その結果、自分の存在価値を認めて、責任を自覚できるようになり、ついには社会復帰を果たせるようになるというものです。幅広い精神疾患に対して効果があるという報告があります。

条件反射制御法

アルコール依存や薬物乱用などに対して大きな効果を示すことで注目されているのが条件反射制御法です。逸脱行動を取らせる欲求や衝動を抑える効果があります。問題のある行動を取りたくなる欲求を抑える内容の治療です。

依存症の患者は、ある種の条件反射が作られていると考えられます。たとえば、アルコールを摂取することで快感を得る体験を繰り返すことで、アルコールを見ただけで飲みたくなり、衝動を抑えられなくなるのです。この条件反射を弱める治療が行われます。また、「もうお酒を飲めない時間が続くのだ」という新たな条件反射を体に覚え込ませる治療も行い、依存心を抑える効果を期待できるのです。

個別精神療法

精神療法には、上記に紹介したもの以外にもさまざまな方法が存在します。そのなかには、依存症の治療に効果を期待できるものが多いです。ただし、患者によって、治療方法の向き不向きが存在します。そこで、まずは患者の診察をして、本人に適した治療プログラムを決めることが大切です。これが個別精神療法と呼ばれるものです。患者ごとに独自の治療方針を定めて、精神療法を中心とした治療を行います。たとえば、カウンセリングを通して、認知のゆがみを改善していき、行動をコントロールできるようにする認知療法などです。主治医が様子を見ながら治療を進めていきます。

集団療法

依存症に対して集団療法は一定の効果を発揮するとされています。集団療法とは、同じ悩みや問題を抱えている人たちが集まって、治療を受けることです。主に認知行動療法をもとにして集団療法のプログラムが考えられます。たとえば、薬物依存症の集団療法は、よく行われていることです。みんなで集まって自分の状況を報告したり、互いに解決策を話し合ったりするといった内容です。家族や友達に自分の症状を話すのは辛くても、同じ悩みを抱えた人たちに対しては本音で話すことができます。

ストーカー加害者の支援団体がある

ストーカー加害者を支援する団体があります。その支援団体はどんなところなのかご紹介します。

加害者の社会復帰を支援する

ストーカー加害者のなかには、警察から警告を受けたり、摘発されたりするケースがあります。その後、ストーカー加害者は実刑を受けるケースもあれば、そうでないケースもあります。いずれにしても、加害者は最終的には社会復帰をしなければいけません。しかし、ストーカー加害者が自分ひとりの力で更生することは難しいです。そこで、ストーカー加害者が社会復帰できるように支援する目的で支援団体が生まれました。

加害者の更生プログラムに取り組む

ストーカー加害者が社会復帰を果たすためには更生しなければいけません。そうしなければ、ストーカー加害者はストーカー行為を繰り返す可能性があります。正常な精神状態から逸脱した状態のままでは、普通に生活を送ることすら困難になるでしょう。そこで、支援団体は、独自の更生プログラムを用意して、ストーカー加害者の更生を支援します。

ただし、支援団体は医療機関ではないため、投薬などの治療行為をすることはできません。基本的には、ストーカー加害者がグループとなって話し合いをするといった内容がメインです。会話を通じて自分の考え方や価値観の誤りを自覚してもらい、正常な考え方や行動を身につけることを目的としています。自分だけの力で行動や思考を変えることは難しくても、グループになって、みんなで協力すれば改善することは可能です。

実際に更生できたケースは多い

実際にストーカー加害者の支援団体の取り組みに参加して更生できたというケースはあります。最初は自分がストーカーであることを自覚してない人も、他者との会話を通じて自覚していきます。自分の行動のおかしさを自覚できるようになれば、そこから更生への道が開けていきます。軽度のストーカーであれば、更生できたケースは多いです。

ただし、支援団体の活動に参加しても、最後まで変わらなかったという人もいます。自分が正しいと思いこんでいて、他人の意見を聞き入れられず、頑なになっているからです。そのような人に対しても支援団体は熱心に働きかけて、更生してもらえるように努力しています。

基本的に費用は自己負担

支援団体の取り組みに参加するためには、基本的に費用がかかることが多く、自己負担となります。医療行為を受けるわけではなく、健康保険は使えません。また、支援団体の活動に参加するための費用をストーカー加害者に対して国が支援するという制度が日本にはありません。そのため、経済的な問題を抱えていて更生支援を受けたくても受けられないという人もいます。

ストーカー加害者の治療・支援をする意義とは?

そもそもストーカー加害者の治療や支援を必要ないと考える人がいるかもしれません。なぜ、ストーカー加害者の治療や支援が実施されるのか、その意義について解説します。

厳罰化ではストーカーを防げない

ストーカーに限ったことではありませんが、厳罰化を進めることで犯罪を防げると考える人がいます。しかし、ストーカーに関しては、たとえ厳罰化されたとしても、被害が大幅に減る可能性は低いでしょう。そもそも、ストーカーは正常な判断能力が失われていることが多く、刑罰を恐れてストーカー行為をやめようという発想をしません。ストーカー行為は、依存症のような状態で行われることが多く、本人の意志で抑えることができないのです。やめたくてもやめられないストーカーは大勢いて、それは厳罰化でどうこうできる問題ではないでしょう。

加害者を治療することが被害者を安心させる

ストーカー加害者は、逮捕されて刑務所に入れられるケースもあるのですが、大部分はすぐに社会に戻ります。そうなると、ストーカー加害者が再び同じターゲットに対してストーカー行為を繰り返す可能性があるのです。これでは、被害者はいつまで経っても安心することができません。もし、ストーカー加害者を治療して更生させることができれば、被害者は安心できます。ストーカー加害者は、ずっと社会に残り続けるため、ストーカー被害をなくすためには、治療をすることが大切なのです。

加害者の家族や周囲の人へのサポートも必要

ストーカーの問題では、加害者だけではなく、その周囲の人たちも苦労していることが多いです。家族や周囲の人たちが、ストーカー加害者を助けようと努力しているケースがあります。しかし、自分たちの力だけではなかなか更生させることができず、どんどん疲弊してしまいます。このような人たちをサポートすることも求められています。

たとえば、ストーカー加害者への治療を行っている医療機関では、加害者の家族などへのサポートも実施しています。ストーカー加害者の支援団体も、加害者の周囲の人へのサポートを行っているケースはあります。

加害者予備軍を食い止めることも大切

世の中にはストーカーとまではいえなくても、ストーカー予備軍となっている人はたくさんいます。ストーカー予備軍の段階で食い止めることができれば、大きな被害を未然に防ぐことができるでしょう。ストーカー予備軍を怖がるのではなく、積極的に働きかけて、ストーカー行為をやめるように促すことは大切です。たとえば、家族や友人に加害者になりそうな人がいれば、医療機関や支援団体、カウンセラーのもとに連れて行くようにします。そうすることが、ストーカー被害を減らすことに直結するのです。

まとめ

ストーカー加害者への治療や支援団体の活動などをご紹介してきました。ストーカー被害は増えているのですが、被害者を守るだけではなく、加害者を更生させるという視点を持つことは大切です。ストーカーの加害者に対する理解を深めて、やめさせるためにできることを行いましょう。

ストーカー対策と調査の料金・費用相場

ストーカー対策と調査の1日あたりの相場:

約12.4万円

ストーカー対策と調査の料金・費用の割合

10万円未満 --件 (--%)
10万円~30万円未満 --件 (--%)
30万円~50万円未満 17件 (12.7%)
50万円~70万円未満 39件 (29.1%)
70万円以上 78件 (58.2%)