犬の鳴き声でご近所トラブルを起こさないための予防策と苦情時の対応
ご近所トラブルには様々なケースがありますが、中には飼い犬の鳴き声が引き金となるケースも少なくありません。そこで、実際に合ったご近所トラブルの事例やトラブルを起こさないための対応策、そして、苦情やクレームへの対応策をご紹介します。
犬の鳴き声はご近所トラブルになりやすい
東京環境測定センターの騒音の測定結果によると、犬の鳴き声(正面5m)は90dB(デシベル)にあたり、窓を開けた状態の地下鉄の車内よりもうるさく、騒々しい工場の中と同レベルの騒音とされています。
犬は吠える動物ですから、鳴き声をあげるのは当たり前です。ただ、犬嫌いの人や犬の鳴き声に不快に感じる人がいるのも事実です。
飼い主は、犬の鳴き声がご近所トラブルの原因にならないよう注意することも、飼い主としての責任だと理解しておかなければなりません。
参考:東京環境測定センター「dB(デシベル)について」
http://www.toukansoku.co.jp/products/souonn7.html
実際に合った迷惑防止条例違反の事例
飼い主は、犬を適切に管理する責任があり、対応の仕方によっては自治体が定める「迷惑防止条例」違反となり、処罰されるケースがあります。その一例をご紹介します。
大阪地方裁判所が下した2015年12月11日判決では、昼夜問わず吠え続ける犬の鳴き声が、隣家の住人の健康状態を悪化させる原因であることが認められたため、犬の飼い主に約38万円の損害賠償金を支払うよう命じました。
判決が下るまでの経緯は、被害を受けた住人が再三にわたり、飼い主に犬の鳴き声に対する苦情の申し立てを行いましたが、飼い主は問題を解決しようとしなかったため、裁判に至ったのです。
このように、たかが犬の鳴き声と考えて問題を放置し続けると、裁判になり大事に発展しかねません。
犬が吠える理由を知ろう
とはいえ、犬は吠える動物です。しつけと称して無理やり吠えるのをやめさせても、根本的な解決にはなりません。なぜなら、犬が吠えるには理由があるからです。犬が吠える理由には、大きく分けて4つあります。
- 警戒吠え(走り去るバイクや車、インターホンの音、来客などに反応)
- 要求吠え(お腹が空いた、構って欲しいときなど)
- 遠吠え(サイレンや鐘などに反応、不安や気を引きたいなど)
- 夜鳴き(認知症、運動不足、寂しいときなど)
犬にとって吠えることは、コミュニケーションの1つと考えられています。後ろから急に走り去るバイクや車に追われれば不安や恐怖を感じます。犬は、警戒して相手を遠ざけるために吠えるのです。また、お腹が空く、飼い主に構って欲しいなど要求があるときにも吠えます。
一般的に、犬の遠吠えは遠くにいる仲間とのコミュニケーション方法として知られていますが、ひとりでいることへの不安や飼い主の気を引きたいときにも犬は遠吠えをします。
夜鳴きの原因は様々あり、認知症を患っている老犬や運動不足、飼い主とのコミュニケーション不足で寂しさやストレス発散で夜鳴きをする犬もいます。
このように、犬がなぜ吠えるのか理由を知ることで、飼い主がとるべき行動は異なることが分かります。
ご近所トラブルを起こさないための予防策
飼い主ができるご近所トラブルを起こさないための予防策をご紹介します。
犬を飼ったらご近所にあいさつしておく
ご近所と普段からコミュニケーションをうまく取れているかで、ご近所トラブルの予防ができます。ご近所同士のトラブルで多いのは、コミュニケーション不足が根本的な問題であることがほとんどです。気心しれた相手同士なら、多少の騒音なら受け流すことができます。
ご近所とのトラブルを避けるためにも、日頃から良い関係を築くようにしておきましょう。犬を飼い始めたばかりや犬の散歩デビューする際には、ご近所に声をかけておきましょう。
たとえば、「鳴き声などでご迷惑をおかけすることもあるかもしれませんが、よろしくお願いします」と、ご近所への配慮があるとないとでは相手が受ける印象も異なります。
すでに犬を飼っているのであれば、「〇月から犬を飼い始めたのですが、ご迷惑おかけしていませんか?」と聞いて様子を窺ってみるのも1つの手です。
犬が吠える原因を理解し、解決する
吠える犬に「うるさい!」と怒鳴るのではなく、どんな原因から犬が何を訴えているのかを知り、解決することが大切です。
たとえば、警戒吠えなら、何に対して警戒しているのかを見定め、その対象物が恐いものではないと時間をかけて繰り返し教える必要があります。
犬は人間のように言葉で気持ちや感情を伝えることはできません。犬は「吠える」ことで意思表示をする動物であることを理解した上で、適切な解決方法を探しましょう。
必要なしつけやトレーニングを行う
犬は吠える動物ではあるものの、人間と一緒に生活する以上は必要最低限のしつけやトレーニングが必要です。「マテ」「オスワリ」「コイ」などのしつけは、犬が誰かに飛びついたり、道路に飛び出したりするのを防ぐことができます。
犬に正しいしつけやトレーニングを行うために必要なことは、飼い主自身が正しい知識や方法を学ぶことです。そのためにも、一人で悩まずに信頼できるドッグトレーナーや犬の心理に詳しいドッグビヘイビアリストなどの専門家に相談しましょう。
ご近所からの苦情パターン
ご近所から万が一苦情がくる場合、どんなパターンが考えられるのかをご紹介します。大きく分けて、3つのパターンが考えられます。
- 直接もしくは自治会・大家さんを通じて
- 保健所や自治体を通じて
- 警察に通報
苦情を訴える人によっては直接言ってきたり、一戸建てなら自治会の回覧板で回ってきたり、賃貸物件なら大家さんを通じて苦情が伝えられます。
公共機関を通じて苦情がくるパターンとしては、保健所や自治体、警察に通報するケースです。口頭注意などを受ける可能性があり、その後の対応によっては裁判など大ごとになりかねないため注意しましょう。
ご近所からの苦情・クレームへの対応策
ご近所から苦情やクレームを受けた場合の対応策についてご紹介します。
散歩以外は屋内に入れる
屋外飼育をしているのなら、散歩以外は屋内に入れるというのも1つの手でしょう。屋内に入れることで鳴き声の響きを抑えることができたり、警戒吠えがなくなるので、有効な対応策です。
犬は本来、家族と一緒に生活を共にする動物です。そのため、散歩以外の時間をひとりで過ごすことで寂しさから吠える犬も少なくありません。
可能な限り、屋内に入れる工夫や犬とのスキンシップ、コミュニケーションをとる時間を増やしてあげましょう。
ペットカメラを設置する
飼い主の留守中に犬が吠えたことへの苦情やクレームを受けたら、まずは飼い犬が留守中に吠えているかを確認することが大切です。いつもと同じように外出したフリをして、飼い犬が吠えているのかを確認しましょう。
吠えていることが確認できたら、飼い主がいないことによる寂しさから吠えている可能性が高いです。対策として、マイク内蔵のペットカメラの設置をおすすめします。
マイク内蔵のペットカメラであれば、犬の鳴き声に反応してスマホに知らせてくれ、スマホから犬に話しかけて犬をなだめることも可能です。
防音グッズを使用する
物理的に犬の鳴き声を遮断するには、防音グッズの使用を考える必要があります。防音グッズを使用することで、犬が吠えても鳴き声をある程度抑えることが可能です。防音グッズには、以下のようなものがあります。
- 吸音パネル(壁に設置することで音の振動を吸収する)
- 防音シート(壁や床に設置することで建物に伝わる音を軽減させる)
- 防音マット(床に敷くことで階下に伝わる音を軽減させる)
- 防音・遮音カーテン(高音域の音を吸収する)
- 防音ゲージ犬小屋(屋内外で使用できる防音加工された犬小屋)
ただ、グッズによっては犬の鳴き声を完全に遮断するのは難しいものもあります。
防音のためのリフォームをする
飼い犬に室内で自由に過ごさせたい、吠えるたびに叱りたくないのであれば、防音のためのリフォームをするのも手です。ただ、防音のリフォームとなると高額な費用がかかります。
部屋の広さやリフォーム方法にもよりますが、大体15~数百万円の費用が必要です。興味がある人は、リフォーム業者に一度見積もりをとって相談してみると良いでしょう。
なるべくなら、ご近所からの苦情やクレームで気づく前にご自身でできる防音対策をしておくことをおすすめします。