• 認知をしていない子供が数人いる、という噂を残して他界したのが私の祖父でした。
    現在は不倫をするだけでも叩かれる時代ですが、祖父が若い時は女性の面倒を見るのが男の甲斐性とされる時代だったと、祖父は誇らしげに孫の私に話していました。祖父が他界して遺産を相続する際に世話になったのが、祖父を昔から知る弁護士、その弁護士に託していた遺書から、身内が誰も知らない祖父の子供の存在が明らかになりました。祖父の子供と言っても、半世紀近く祖父はその子供には会っておらず、遺書に記されていた住所は合併などで存在していませんでした。弁護士に紹介されたのが民事事件以外に刑事事件も扱う探偵事務所、探偵を依頼する際に気掛かりなのは支払う報酬でしたが、その探偵事務所は完全成功報酬型、しかも知り合いの弁護士を通しているため、料金は事前に知らされていた予算内で収まりました。身内が誰も知らない祖父の子供は、探していたその1人だけ、その1人も半世紀ほど昔に他界して代襲相続する者もいなかったため、遺産相続分に変更が生じることはありませんでした。若くしてそして自身の存在を身内に知られず亡くなった祖父の子供、半世紀ほど経ってようやく身内になれたことに、あの世で祖父と喜んでくれれば身内として幸いです。