• あれは7年前の事でした。
    いつものように仕事を済ませて帰宅する途中、ずっと白いセダンが後ろを付いて来ていました。気のせいだろう。初めはそう思っていました。それから外出しようとする度に、家の近くに白いセダンが停まっていました。毎日のように同じ白いセダンを見かけますが、怖くて誰が乗っているのか確認する事もできませんでした。ある日、玄関の郵便受けに、私の写真が大量に入れられていました。いつでもお前を見ているぞ、と言われているようで背筋がぞっとしたのを覚えています。近くの派出所に駆け込んで事情を説明しましたが、警察官はまともに取り合ってくれません。あなたの服装に問題があるんじゃないの?とまで言われました。

    怖くて耐え切れなくなった私は、ネットで調べて対策を依頼しました。その白いセダンを逆に尾行するような形で身元を割り出しました。写真を撮って証拠も押さえました。ストーカーをしていたのは、私の友人の旦那さんでした。理由は口ごもるばかりで、はっきりとは言いませんでした。覚えてないだの、やってないだの、のらりくらりと逃げようとして埒が明きませんでした。

    結果的に私は住み慣れた街を離れる事にしました。もうあの街には住みたくありません。きっとまだ白いセダンの男は、のうのうと毎日を送っている事でしょう。
    何が目的だったのか釈然としないまま、スッキリとしませんが今は平穏に過ごせています。後ろに付いて来ているのではないか、という恐怖は消えないままですが。