盗撮や盗聴は犯罪行為?どこまでが許される行為なのか解説
盗撮や盗聴は犯罪行為であると考える人が多いかもしれません。しかし、盗撮や盗聴行為自体は違法ではありません。そもそも、盗撮器や盗聴器の購入も普通に誰でもできます。
では、どうして盗撮や盗聴で犯罪行為として捕まっている人がいるのでしょうか。
盗撮や盗聴の犯罪行為とどこまでが許される行為なのかを解説していきます。
盗撮器や盗聴器の購入は合法
まず、盗撮器や盗聴器を購入することは違法ではありません。たとえば、ネットショップで盗聴器を購入したとしても、購入したこと自体で捕まるということはありません。
そもそも、盗聴器や盗撮に使えるカメラなどは、犯罪目的で使うことを想定して販売されているわけではありません。たとえば、浮気調査など正当な理由による調査を行いたい人のために販売されています。家電量販店や専門店などに行けば、普通に盗撮器や盗聴器が棚に並んでいます。
購入するのに本人確認をする必要はなく、所有するのに許可を取る必要もありません。気軽に購入できるのが実態です。
盗撮器や盗聴器の設置をすることで違法になる場合がある
盗撮器や盗聴器の購入は違法ではないとお伝えしましたが、それを設置すること自体も違法ではありません。
たとえば、自宅内で自分の所有物に設置することは違法にはなりません。防犯のためにカメラや盗聴器を自宅内に設置する人は少なくありません。
しかし、他人の所有物に盗撮器や盗聴器を設置することは違法となる可能性があります。設置自体が違法ではないとすると、別のことで違法になっています。たとえば、他人の住居に盗撮器や盗聴器を仕掛ける際に、住居や敷地内に不法侵入するケースです。この場合は不法侵入罪が適用されるでしょう。
また、盗撮器や盗聴器を仕掛けるために、他人の所有物を勝手に改造したり、壊したりするケースがあります。この場合は、器物破損罪が適用されるでしょう。
コンセントや電話回線などに盗聴器が設置されるというケースもあります。電源周りのものを扱うためには免許が必要です。免許を持たずに電源周りをいじったのであれば、違法行為となるでしょう。
盗撮器や盗聴器の購入や設置そのものを処罰する法律は日本には存在しません。しかし、設置をする際にさまざまな法律に違反する場合があり、そのことで罪に問われることがあります。
盗撮や盗聴行為、盗聴波の傍受、そのものを罰する法律はない
先にも触れたように、現在の日本の法律に盗撮や盗聴行為そのものへの罰則は存在しません。一般的には、盗撮や盗聴は違法と思われていて、倫理的にいけないことであるという共通認識があります。しかし、法的にいえば、盗撮や盗聴をすること自体に違法性はないのです。
盗撮や盗聴によって得られた情報を正当な理由で扱うことは、違法ではありません。たとえば、夫が浮気している疑いがあるため、調査をする目的で家族名義の車に盗聴器を設置し、盗撮や盗聴をするのは問題ありません。実際に探偵に浮気調査を依頼すれば、探偵はそのような盗撮や盗聴行為を行います。浮気の事実を確認するために仕方のないことだとみなされるからです。その他には、盗聴器発見業者が調査するために、電磁波を傍受する場合があります。そういった調査も違法ではなく合法です。
また、自宅に盗聴器を仕掛け、得られた情報を元に誰にも漏らさなければ違法にはなりません。
違法となるのは、盗撮や盗聴をしたことで生じた結果に対して取り締まりが行われているからです。
芸能人が写真週刊誌に盗撮されて、それが雑誌に掲載されるケースもあります。これは、基本的に公の場での姿が撮影されただけであり、即座に違法であるとはいえないため、罪にはなりません。
ただし、肖像権侵害やプライバシー権侵害として裁判で訴えられるケースはあります。この場合は、盗撮した行為そのものではなく、盗撮で得られた情報の取り扱いが問題となります。
また、盗撮や盗聴に正当な理由があったとしても、他人の私有地に勝手に侵入したり、他人の所有物のなかに盗聴器を仕掛けたりするのは、それぞれ違法行為となります。
盗撮や盗聴が認められるのは、正当な理由で合法的な方法で行う場合に限ります。
盗撮や盗聴行為をして罰せられるケース
では、どういうことをすると罰せられるのか、ケースをご紹介します。
盗聴したデータを他人に吹聴した
盗聴したデータから得られた情報を他人に吹聴した場合は、罰せられます。たとえば、電波法違反に問われる可能性があります。電波法59条では、無線電波を傍受して、内容を誰かに漏らすことが禁止されているのです。電波法第109条には、無線通信の秘密を漏らしたものに対して1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処するという条文があります。
また、「プライバシーの侵害」や「個人情報保護法違反」としても罰せられる場合があります。
相手を脅迫したり金銭を要求したりするケース
盗撮や盗聴によって得られたデータを用いて相手を脅迫する、金銭を要求するといった行為は、脅迫罪が適用される可能性が高いです。
たとえば、盗聴によって相手が不倫をしていることを知り、その秘密を配偶者にバラされたくなければ、お金を支払ってデータを購入することを求めるといったケースが考えられます。この場合は脅迫罪として罪に問われる可能性があります。
あるいは、恐喝罪に該当するケースがります。恐喝罪は、暴力や相手の秘密を握るなどで脅迫をして、相手から金銭や財物を脅し取る犯罪のことです。
盗聴などで知った情報をもとにストーカー行為をするケース
盗撮や盗聴などで得られた情報をもとにして、相手にストーカー行為をするケースがあります。たとえば、職場や学校の情報を知って、つきまといや待ち伏せ行為をするケースです。この場合は、ストーカー規制法違反に該当します。
盗聴などで知った情報により他人を誹謗中傷するケース
盗聴などで得られた情報を用いて相手を誹謗中傷するケースがあります。たとえば、相手の知られたくない情報をネット上で暴露して批判するといったケースです。この場合は、名誉毀損に問われる可能性があるでしょう。
名誉毀損では、その人が不倫をしている、前科者であるといった真実の情報であったとしても、それを暴くことがその人の人権や尊厳を侵害する可能性がある場合には罪に問われます。ただし、名誉毀損罪は親告罪であり、被害者が告訴をしないと検察が犯人を起訴することができません。
他人の裸体や下着姿などを盗撮する
たとえば、更衣室に盗聴カメラを設置して、そこを利用する人の裸体や下着姿などを撮影するというケースがあります。基本的には軽犯罪法違反となり、拘留もしくは科料という罰則内容です。
拘留は1ヶ月未満を限度にして留置する処分です。科料は1,000円から1万円未満の罰金となっています。したがって、非常に軽い処分とされています。ただし、それぞれの自治体の定める迷惑防止条例違反が適用されると、軽犯罪法違反よりも重い罪となります。
迷惑防止条例は、自治体ごとに内容が異なっています。基本的には、公共の場所における犯罪を取り締まっているものです。したがって、職場の更衣室のような私的な場所における盗撮については、自治体によっては迷惑防止条例違反が適用されない可能性もあります。
盗撮した動画を不特定多数の人に公開する
盗撮した動画をネット上の動画サイトで公開するといったケースがあります。この場合は、肖像権侵害とみなされる可能性があります。肖像権侵害を理由とすれば被害者は損害賠償を請求したり、動画などの削除請求をしたりすることが可能です。
ただし、日本の法律には肖像権を明文化したものはないため、刑法による責任を問われることはありません。あくまでも、民法に基づいて損害賠償請求などが認められるケースがあるだけです。
また、公開された動画に被害者の顔が写っていて人物を特定できる場合には、名誉毀損罪に該当するケースがあります。
公開した動画が裸体など性的なものに当てはまる場合は、わいせつ物陳列罪によって処罰される可能性があります。
盗撮した性的な画像や動画を販売する
盗撮したわいせつな画像や動画を販売した場合には、わいせつ物陳列罪となります。
盗撮した対象が児童の場合は、児童ポルノに該当します。この場合、児童ポルノ法違反となります。
まとめ
日本では盗撮や盗聴行為を直接罰する法律は存在しません。自己利用や浮気調査などのために盗撮や盗聴自体は基本的に許されています。ただし、盗撮や盗聴をしたデータの取り扱いなどによっては、さまざまな法律による罰則を受ける可能性があります。どこまでが許されるのか、この記事を参考にしてください。