痴呆症・認知症で行方不明になった人の探し方と徘徊を防止する対策

痴呆症、認知症が原因で徘徊するようになり、帰ってこないという人は大勢います。高齢になると誰しもが認知機能が衰えてくるものです。両親、祖父母の様子が最近おかしいと思ったら徘徊しないよう事前対策をしておく必要が出てきます。
ただ、事前対策していてもいつの間にかいなくなっていた、なんてことはあります。徘徊し、自宅に戻ってくるのであれば問題ありませんが、そのまま行方不明になってしまうと心配が募ってしまいます。
この記事では、痴呆症、認知症が原因によって徘徊し、行方不明になってしまった人の探し方や徘徊への対策をご紹介しています。
痴呆症疑いで行方不明になる人数
令和5年度における痴呆症、認知症疑いによる行方不明者の数です。

引用:令和5年における行方不明者の状況(pdf)」(警察庁)
認知症に係る行方不明者の人数
2014年:10,783人
2015年:12,208人
2016年:15,432人
2017年:15,863人
2018年:16,927人
2019年:17,479人
2020年:17,565人
2021年:17,636人
2022年:18,709人
2023年:19,039人
認知症が原因で行方不明になっている人数は毎年増えていっていることがわかります。
老人(60歳以上と定義)の人口が減るまでは当面増えていくことが予想できます。
次の表は「1年間に見つけられた人数と行方不明届出を提出してから見つけられるまでにかかる期間」を表したものです。

引用:令和5年における行方不明者の状況(pdf)」(警察庁)
所在確認までの期間
届出受理当日:13,517人
2日~3日:4,471人
4日~7日:131人
8日~14日:33人
15日~1か月未満:30人
1か月~3か月未満:23人
(以降、省略)
行方不明届出がされてから当日が多いことがわかります。この表からは、届出してから3日以内に見つけられるかどうかが、探しだせるかの分かれ目になることがわかります。
痴呆症・認知症で行方不明になった時の探し方
気づいたらいなくなっていたときの探し方をご紹介します。認知症が進んでいると帰り道が分からなくなり、こちらから探さないと帰ってこなくなります。上記で示した通り、当日に見つかるケースがほとんどですのですぐ対応することで探し出せる確率は高まります。
自分で探す
まずは自分たちで探すことです。よく行く以下の場所を重点的に探してください。
- よく歩く散歩コース
- 仲の良いご近所の家
- 最寄りの駅
- よく行くスーパー・コンビニ
- よく利用している施設
徘徊は徒歩でしているのでいなくなってから時間が経過していない場合は遠くには行っていないので、普段よく行く場所を重点的に探しましょう。
警察に行方不明届出を提出する
自分で探す一方、警察にも相談してください。警察に状況を伝えることで見回りを行ってくれるでしょう。人数をかければかけるほど見つかる確率は高まります。
地域包括支援センターに連絡する
地域包括支援センターへ連絡することで、行方不明認知症高齢者等情報共有サイトが更新され、市区町村や警察署に情報が共有されます。誰かが見かけて通報してくれた場合などは、警察から連絡が届くようになるので、支援センターに連絡しましょう。
仕組みは東京都福祉局のページで詳しく紹介されているのでご覧ください。
利用しているデイサービスなどに声をかける
普段利用しているデイサービスなどにも声をかけましょう。いつも利用していることでそこに向けて歩き出しているかもしれません。デイサービスの方も気にかけて近辺を探してくれるかもしれません。
自治体に連絡する(お住いの市区町村)
地域包括支援センターと同じように情報を提供するとともに、行方不明者として情報が届いていないか連絡しましょう。情報が入ったときに連絡をもらう先は多い方が良いので、必ず連絡をしておきましょう。
自治体が提供する徘徊への対策グッズ例
認知症の人には常に徘徊への危険がつきまといます。名前と住所が書かれたワッペンを服に縫い付けたり、靴底に入れておいたり、自分たちでできる対策はしているかと思います。それ以外にも各自治体が対策グッズを提供している事業が存在します。その一部をご紹介します。詳細はお住いの自治体にお問い合わせください。
GPS
一つ目の例は前橋市のGPS貸し出しです。月額約1000円で貸し出しをしています。
靴底などに入れて置いたり、お財布の中に入れたりして利用します。

携帯会社もGPS機能がついた携帯を発売しているのでそれも合わせて利用するのもいいでしょう。
キーホルダー
同じく前橋市では、無料で「見守りキーホルダー」を配布しています。見守りキーホルダーには登録された番号が書かれていて、その番号を照会すると登録された名前や住所がわかるようになっています。
東京都大田区などでも「見守りキーホルダー」を実施しており広く自治体で実施しています。
QRコードシール
3つ目は福井市で実施している QRコードが付いた「認知症高齢者見守りシール」です。
登録された名前や住所の個人情報をQRコードを読み込むと確認できるというものです。服や持参品に貼っておくことで、徘徊して誰かが保護してくれたときにこのQRコードを読み込めば情報が分かるという仕組みです。
横浜市も導入していたりと、こちらも広い自治体で導入されています。
徘徊を防止するための対策
徘徊したときの対策はグッズなどを用いて対策を施しますが、では、防止するための対策はどうでしょうか。
限られていますが、ご紹介します。
- 玄関や窓にセンサーや鈴を取り付けて、音で出ていくことが分かるようにする
- なるべく一人にさせない
- 玄関に興味を示すものや好きなものを置いておく
- 見守りカメラを設置する
孤独を感じさせないことや出ていくことが分かる対策を入れておくことで防止につなげられます。それでも出て行った場合でも、出て行った時刻を記録しておくことで探す場所などを絞れるようになります。
やってはいけない対策
認知症の人との同居は非常にストレスがかかるものです。いつ何時家を出ていくのか、徘徊するのかという危険と隣り合わせです。徘徊しないように対策しようと考えるのは普通の思考ですが、やってはいけない対策があります。それの基本は、認知症患者の自尊心を傷つけないということです。自尊心を傷つけられると認知症が悪化してしまうのでやってはいけません。具体的には以下をご紹介します。
靴を隠す
靴を隠したところで認知症の人にとっては関係ありません。そのままはだしで家を出てしまいます。
はだしですので当然ケガのリスクも高まりますし、徘徊を予防することもできません。むしろ、隠されたことで自尊心を傷つけることになり、かえってよくありません。
暴言や暴力をふるう
ストレスがたまってつい暴言を吐いてしまう気持ちも理解できます。ただ、暴言や暴力は絶対にしてはいけません。認知症をすすめ、徘徊のリスクも高まります。
鍵をかけてドアを部屋に閉じ込める
部屋に閉じ込めることも絶対にやってはいけません。閉じ込められると余計に出ようと試みるでしょう。窓があれば窓を割ってでも出ようとします。
認知症だからわからないではなく、自尊心を傷つけずになるべく普通に接しながら徘徊したときの対策を重点的に考えましょう。
まとめ
認知症の人の徘徊を防止するのも大変ですが、対策を講じれば可能性を下げられます。ただ、対策をしても徘徊を完全には防ぎきれず気づいたらいなくなっていたということがあります。その際は、公的機関に連絡して情報を共有しておきましょう。また、見つかりやすいように自治体が提供する対策グッズも取り入れて、早期発見につなげましょう。