熟年離婚の原因6つとメリット・デメリット
最近、熟年離婚をする夫婦が増加しています。熟年離婚とは、長い間連れ添ってきた夫婦が離婚してしまうこと。例えば、夫が定年退職し、これから老後を夫婦でのんびりと過ごそうと思っていた矢先に妻である女性の方から突然切り出されることが多いようです。
熟年離婚をパートナーから切り出された、もしくは、現在熟年離婚を考えている人に向けて、熟年離婚の原因とメリット・デメリットを詳しく解説していきます。
監修者
大原昇
総合探偵社クロル 代表取締役社長
2006年に大手探偵事務所に入社後、15年以上にわたり相談業務や調査、人事など幅広い分野で経験を積みました。その後、2021年に総合探偵社クロルを設立。18年にわたる業界経験を基に、証拠を集めるだけでなく、お客様の目線に立って問題を捉え、解決へ導くことを信条としています。お客様が前向きな一歩を踏み出せるよう、全力で取り組んでいます。
監修者
大野まり子
夫婦問題カウンセラー / 心理カウンセラー / 行動心理士 / AFP
2013年より夫婦問題に特化したカウンセラーとして活動。 AFP・心理カウンセラー・行動心理士の資格を活かし、これまでに延べ4,000名以上を支援。 自身の離婚経験も踏まえ、不倫や信頼修復など幅広い相談に、実践的かつ丁寧に寄り添う支援を行う。 埼玉夫婦問題カウンセリングセンター(オフィスえん)代表。
熟年離婚の原因6つ
長い間一緒に過ごした夫婦の離婚の原因は、具体的にはどういうものがあるのでしょうか。離婚を切り出された人は、ここでご紹介する原因が当てはまっていないか確認しながら読み進めてください。離婚の原因や理由は夫婦によりさまざまですが、ここでは一般的によくある熟年離婚の原因です。
定年後に一日中過ごす時間が苦痛
女性が熟年離婚を考えるようになる原因でもっとも多いのが、夫と一日中顔を合わせることが苦痛、ということです。
これまで夫が仕事に行っている間は自分の趣味や買い物など自由な時間をのびのびと過ごすことができていたのに、夫が定年退職をして家に居座るようになってしまうと、朝昼晩の3食の食事の準備をし、自由に息抜きをする時間がなくなってしまいます。これがストレスになり、長い間蓄積していた不満とともに一気に爆発して離婚に至ってしまうというわけです。
子どもの自立を待つため
結婚して子どもが生まれると、ほとんどの家庭で子どもが中心の生活になります。気が付いたら、夫婦の間の話題は子どものことばかりという家庭も多いでしょう。それが、子どもが自立して家を出てしまうと、一気に夫婦間の会話が無くなり、夫婦2人で過ごすことの意味を見出せなくなってしまうというケースが多いです。
また、不満が溜まって離婚が頭の中でちらついていたとしても、子どもがまだ小さいうちは、子どもへのさまざまな影響を考えて離婚を踏みとどまる夫婦もたくさんいます。子どもが自立する時期を待って離婚を選択することも多いようです。
女性の社会進出で稼げるようになった
最近になって熟年離婚が右肩上がりに増加しているのは、女性の社会進出が進んで、自立する女性が増えていることも一因になっています。ひと昔前までは、「男性が外に出て働き、女性は家を守る」という考え方が一般的で、金銭面や世間体から女性は夫から離れて生活することは考えられませんでした。
しかし、最近は結婚や出産を経た後に、女性が社会復帰することができる環境も整えられつつあり、夫の収入がなくても自分が働いて生活できる自立した女性が増えています。そのため、子どもが手を離れ、これから自由に過ごすことができるという時期に、わざわざ不満を抱えて夫と2人きりの窮屈な生活をしたくないという女性が増えているのでしょう。
義理の両親の介護が苦痛
熟年と言われる年齢になると、気になってくるのが介護の問題です。夫や妻の介護だけならまだしも、義理の両親の介護までしなければならないというケースも多いはず。結婚して身内になったとはいえ、血のつながらない義理の両親の介護を一人でするのは想像以上につらいものです。
ようやく子育てを終え、ほっと一息ついたのも束の間、今度は夫・妻やその両親の介護に追われることが耐えられないという方が最終的に熟年離婚を決意することが多いようです。
女性は夫の退職金を待つため
結婚して早い段階から離婚することを決意していても、やはり、金銭面や子どものことを考えて離婚を踏みとどまっているという女性は多いようです。とくに専業主婦の場合は、なかなか貯金もできず、実際早いうちに離婚をしてしまうと苦しい生活を送ることになってしまうでしょう。
そこで、夫が定年退職して退職金をもらうまで待ってから熟年離婚をし、まとまったお金をもらうというケースが増えているのです。夫が働いて稼いだお金でも、それを妻が長年支えてきたということで、妻も財産分与を受けることができます。
夫・妻の浮気
熟年離婚に限ったことではありませんが、夫・妻の浮気も熟年離婚の原因の一つです。
早い段階で不倫をしていることに気付いていたものの、子どものことを考えて我慢し続け、子どもの手が離れたころに離婚するというケースです。不倫で裏切られたことによって崩れてしまった信頼関係はなかなか修復することができません。もし、熟年離婚の原因がどちらかの不倫によるものならば、慰謝料等が発生する可能性が高いので、早いうちに第三者に相談しておいた方が良いでしょう。
熟年離婚のメリット4つ
長年連れ添ったパートナーと離婚して他人になるには、相当の覚悟が必要になります。ここでは、実際に熟年離婚をするとどのようなメリットがあるのか詳しくみていきましょう。熟年離婚しようかどうか悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。
自由な時間ができる
熟年離婚をする最大のメリットは、自分の自由な時間ができて解放感を味わうことができるということです。これまでの人生を、家族に捧げ、自分を押し殺して生きてきたという人にとってはこれほどのメリットはないでしょう。
熟年離婚をして新しくパートナーを見つけたり、新しい趣味を始めてみたり、離婚後に自分らしい充実した生活を送る人はたくさんいます。今更と思う人もいるかもしれませんが、まだまだ人生の折り返し地点にすぎません。熟年離婚をすることで、新しい自分を見つけ、これまでと全く異なる人生を再スタートすることができます。
親の介護をせずにすむ
2つ目のメリットは、義理の両親の介護をせずにすむということです。介護はなかなかの重労働で、これまで長く一緒に過ごした相手への愛情や感謝の気持ちがなければなかなかつとまるものではありません。長い人生の中で義理の両親への不満が積もり積もっている場合は、介護に自分の時間を費やすことに嫌悪感を覚えてしまう人も多いでしょう。
熟年離婚をすれば、介護という重労働から解放されます。親の介護から解放されたというだけで、熟年離婚をして良かったと思う人も多いようです。
新しい恋を楽しむことができる
男性でも女性でも、50代・60代になっても異性として意識されるのは嬉しいことです。恋をするのに年齢は関係ありません。どれだけ年齢を重ねていても、素敵な恋をしていると気持ちにもハリが出て、生き生きとした生活を送ることができます。
最近はシニアのための出会いの場やサークル活動もたくさんありますので、熟年離婚をしたら、ぜひそういう場所に足を運んでみてください。
女性は旦那さんの食事・世話をしなくて済む
主婦であれば誰でも、「たまには出張に行ってくれないかしら、飲みに行ってくれないかしら」と一度は思ったことがあるでしょう。自分一人だけの食事であれば、昨日の夕飯の残りで済ませることができるのに、旦那さんがいるとそういうわけにはいきません。旦那さんが思っている以上に、毎日の食事を準備したり、ワイシャツのアイロンをかけたりするのは大変なものです。熟年離婚をすれば、そんな毎日の旦那さんの食事や洗濯などの世話をしなくてすむというのはとても大きなメリットでしょう。
熟年離婚のデメリット4つ
ここまでは、熟年離婚のメリットを紹介してきましたが、当然デメリットもあります。熟年離婚を本気で考えているのであれば、デメリットについても深く考えた上で最終的に決断するようにしましょう。
女性は金銭的に苦しくなる
熟年離婚の一番のデメリットは、やはり金銭的な問題です。離婚をするまでにある程度の貯金をしておかなければ、いくら財産分与や慰謝料でまとまったお金を得ることができても、老後20~30年の生活のことを考えると不安が残ります。
特に、これまで専業主婦で高収入の夫のおかげで生活できていたという人は、離婚をきっかけにこれまでの生活を大きく変えなければならなくなるでしょう。離婚をして自分の自由な時間はできても、趣味を楽しんだり友人とランチに行ったりする金銭的な余裕がなくなってしまう可能性があるということを理解しておいてください。
孤独を感じる
いくら夫婦間の愛情が冷え切った末に離婚するとはいえ、何十年も連れ添ったパートナーと別れて一人暮らしをするとなると、当然孤独を感じることもあるでしょう。帰宅してもただいまを言う相手がいない、一人でする食事など、年をとればとるほど一人で過ごす時間がとても寂しく感じてしまうものです。熟年離婚を考えている人は、自分が一人の時間に耐えることができるかどうかをもう一度よく考えてみてください。
子どもに迷惑がかかる
離婚をしても、子どもにとっての親は変わりません。離婚をすれば、多少なりとも子どもにも迷惑がかかる可能性があるということを考えておきましょう。
金銭的に苦しくなって子どもに仕送りをしてもらわなくてはならなくなったり、体の自由が利かなくなって子どもに介護をお願いせざるを得なくなるということは十分に考えられます。夫婦で生活していれば、お互いに助け合って乗り越えることができた問題が、離婚することにより全てのしわ寄せが子どもにいくことになってしまうのです。
病気や老後に頼る人がいなくなる
夫婦間の愛情がなくなっていたとしても、夫婦で生活していれば何かあった時には真っ先にパートナーに頼ることができます。しかし、熟年離婚をしてしまえば病気や老後に頼る人がいなくなるということを覚悟しておきましょう。
近所に親しい友人や子どもが住んでいれば、病気や事故で自分に何かあった時には頼ることができるかもしれません。しかし、毎日連絡を取り合うような関係を築いていなければ、家で倒れたとしても気付いてもらうことができない可能性があります。
熟年離婚が成立しないケース
離婚は、相手が応じなければ基本的に成立しません。ですので、妻や夫が応じなければ成立しません。逆に、離婚を切り出されたときに、応じなければ離婚は成立しません。
こちらから申し出て、納得してもらうためには、相手の非を挙げて認めさせるか、話し合いを進めて円満に離婚への理解を深めて認めてもらうか、大きく分けてふたつの方法があります。
相手の非を認めさせる場合は、相手が不倫をしている、相手からのモラハラ・DVなどの証拠を突きつけ、離婚を認めさせるという方法です。
こちらの都合だけで離婚したい場合は、円満に離婚できるよう話し合いをすすめる必要があります。相手を納得させるために、相手の生活を保証する条件などを提示する必要も出てくるでしょう。円満に話を進めることで、デメリットである「病気や老後に頼る人がいなくなる」という部分を、離婚しても補い合える関係でいられるかもしれません。
妻や夫に不倫などの特段の非がなく、離婚を成立させようとする場合は、相手の説得が困難になることを想定しておきましょう。
熟年離婚後の対策4選
熟年離婚をすると、メリット同様デメリットもあります。離婚した後に後悔することがないようしっかりと離婚をする前から対策を立てておきましょう。ここでは、熟年離婚をする前に立てるべき対策をいくつか紹介していきます。
老後までのお金の目途を立てておく
やはり、熟年離婚をする上で一番大切なことはお金の問題です。財産分与や年金分割、不倫が原因の場合は慰謝料など、具体的に自分がどれだけお金を受け取ることができるのかをあらかじめ把握しましょう。そして、離婚してから老後を暮らすためにはどれくらい生活費や住居費がかかるのかということも計算しておく必要があります。
結局、自分の子どもに頼らざるをえなくなり、肩身の狭い思いをして生活するなんてことがないよう、あらかじめきちんと対策をしてください。財産分与や年金分割等は、素人では分からないことが多いので、弁護士に相談しておくことをおすすめします。
何かあった時に頼るところを決めておく
離婚後、自分に何かあった時のために頼るところはあらかじめ決めておき、相手にもそのことを伝えておくようにしましょう。「誰にも頼らずに一人で何とかする」と意気込むのはいいですが、病気や事故など自分ではどうすることもできない事態も起こりえます。自分の子どもや親しい友人、誰でもいいのでいざという時に頼るところを、あらかじめ決めておいてください。
新しい好きな人を見つける
熟年離婚をして急に一人きりの生活になってしまうと、これまで邪魔でしかなかったパートナーの存在の大きさに気付き、孤独感に襲われるという人も多いでしょう。人によっては、誰とも会話しない寂しい生活をするうちに、認知症やうつ病などを発症することも考えられます。そうならないよう、熟年離婚をする前に誰か心の拠りどころとなる新しい好きな人を見つけてみましょう。
熟年離婚が急増している中、同じように考えている同世代の人同士の出会いはたくさんあります。完全に離婚してしまう前に、趣味やスポーツクラブなど、多くの人と出会えるような場所に積極的に出向いてみましょう。
離婚後に一人で行動することを想像しておく
感情のままに深く考えずに熟年離婚をしてしまうと、いざ離婚後に一人での生活が始まった時に「何か思っていた生活と違う」と後悔してしまうことがよくあります。離婚後は、食事や寝る時、買い物やテレビを見る時間も全て一人です。これまで全てパートナーとともに過ごしていた時間を、離婚をしたら一人きりで過ごさなければならないのだということを、離婚を決断する前にきちんと想像してみてください。
離婚前に一人での生活をイメージしておけば、離婚後の実際の生活とのズレも少なく、例え寂しいと感じることはあっても上手に乗り越えていくことができるでしょう。
まとめ
熟年離婚をすると、残りの人生を自分らしく生きることができます。長年パートナーとの生活を耐え忍んできたという人は、熟年離婚後にはバラ色の人生が待っていると期待に胸を膨らませているかもしれません。しかし、実際には熟年離婚にはメリットと同じくらいデメリットもあるのです。特に、女性は金銭的な問題にはほとんどの人が頭を抱えることになるでしょう。
人生を再スタートするために離婚をしたいと考えているなら、離婚したことを後悔しないように事前にしっかりと対策を立ててください。
このページの内容は、バジンプ株式会社が作成しています。その後、監修者が監修を行っています。監修者によって指摘された内容は随時編集を行っています。